業界最軽量のスチール缶を東洋製罐と新日鐵住金が開発、ダイドードリンコが採用:材料技術
東洋製罐と新日鐵住金は「業界最軽量」(両社)というスチール缶を共同開発したと発表した。2018年5月からダイドードリンコのコーヒー製品に採用されて市場に流通している。
東洋製罐と新日鐵住金は2018年8月9日、「業界最軽量」(両社)というスチール缶を共同開発したと発表した。同年5月からダイドードリンコのコーヒー製品に採用されて市場に流通している。
共同開発したスチール缶は、缶コーヒーなどに用いられている185g用の「TULC(Toyo Ultimate Can)」の低陽圧缶になる。缶重量は、スチール缶では業界最軽量の16.2g(蓋除く)を達成した。低陽圧缶仕様の従来缶に対して6%以上、広く使用されているTULCの陰圧缶に対して約40%の軽量化を果たしている。
低陽圧缶は、缶の内圧が外気圧より高い(陽圧)状態のため、缶胴が薄くても強度を保持できることが特徴。缶底もフラットな形状であり、陰圧缶詰用の打検システムを使用できる。一方、缶の内圧が外気圧より低い(陰圧)状態の陰圧缶は、缶の剛性によって強度を保持する必要がある。低陽圧缶よりも厚みのある鋼板を用いるため、缶重量も重くなる。185g用のTULCの場合、低陽圧缶は鋼板板厚が0.185mmで缶重量が17.3g、陰圧缶は鋼板板厚が0.225mmで缶重量が26.7gとなっている。
今回開発した新たな低陽圧缶は、鋼板板厚が0.170mmで缶重量が16.2gとなっている。缶の軽量化によって、製造工程や輸送時のCO2排出量削減が可能になるため、開発したスチール缶の採用拡大が期待されるとしている。
スチール缶の製缶のために供給される鋼板は、製缶時にさらに薄く延ばされる。缶の板厚が薄くなるに伴い、鋼板中の介在物の影響を受けやすくなり、缶は破断しやすくなる。新日鐵住金は、この介在物を極力低減できる技術を適用した板厚0.170mmの鋼板を開発。東洋製罐は、製缶プロセスを工夫することで、鋼板板厚0.170mmによる低陽圧缶の製缶を実現した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 鉄は苦難の旅を経て、鉄鋼へと生まれ変わる――「鉄子の旅」
ママさん設計者と一緒に、設計実務でよく用いられる機械材料の基本と、試作の際に押さえておきたい選定ポイントと注意点を学んでいきましょう。今回は、鉄と炭素の量との関係や、材料記号でよくある「SUS」「SS」「S-C」の意味など、「鉄」に関するいろいろについて解説します。号泣必至の感動作(?)『MONOist 愛の劇場「鉄子の旅」』も、併せてお届けいたします。 - アルミニウムと銅のいろいろと、めっきやアルマイトのお話
ママさん設計者と一緒に、設計実務でよく用いられる機械材料の基本と、試作の際に押さえておきたい選定ポイントと注意点を学んでいきましょう。今回は、“鉄に非(あら)ざる”、「非鉄金属」の中から、アルミニウムと銅のいろいろについてです。アルマイトとめっきの違いについても説明します。 - 融合からその先へ、新日鐵住金が目指すIoTやAIによる生産性改革
新日鐵住金は同社のIT戦略の取り組みについて紹介。合併後のシステム統合の取り組みにめどが立ったことからIoTやAIなど高度ITを活用した生産性改革に取り組む方針を示した。 - 590MPaの成形性で引っ張り強度は980MPa、新開発の超ハイテン材を日産が採用拡大
新日鐵住金は、形状が複雑な骨格部品にも適用可能な成形性を持った引っ張り強度980MPa級の冷間プレス用超高張力鋼板(超ハイテン材)を開発した。自動車に広く使用されている引っ張り強度590MPaハイテン材と同等の成形性を実現したという。 - 新日鐵住金が超ハイテン材の供給体制強化、1500MPa級の生産にも対応
新日鐵住金は、超高張力鋼板(超ハイテン材)の供給体制強化のため、君津製鐵所に溶融亜鉛めっき設備を新設する。 - 菓子缶の小ロット販売で“黒子”脱却、「お菓子のミカタ」が見据えるB2B2C戦略
街のお菓子屋さん向けに菓子用の缶パッケージを小ロット販売しているWebサイト「お菓子のミカタ」。同サイトを運営しているのは創業70年を迎える大阪製罐だ。同社の3代目社長である清水雄一郎氏は、街のお菓子屋さんをサポートする「お菓子のミカタ」の先に、B2B2Cのビジネスモデルを見据えている。