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鉄鋼製造はスマートファクトリーとの相性抜群、JFEが取り組む製造データ活用スマートファクトリー(2/2 ページ)

技術商社のマクニカは2018年7月12〜13日、ユーザーイベント「Macnica Networks DAY 2018」を開催。その2日目にはJFEスチール スチール研究所 計測制御研究部 主任研究員(副部長)の茂森弘靖氏が登壇し「データサイエンスによる鉄鋼製品の品質管理の革新〜多工程リアルタイムセンシングデータの活用による価値の創出〜」をテーマに、局所回帰モデルを用いた鉄鋼製品の品質設計と品質制御により、品質向上や製造コストの削減を達成した事例を紹介した。

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JFEが取り組む「ジャストインタイムモデリング」

 鉄の製造は高炉、転炉、連続鋳造の工程を経て、素材(スラブ)という半製品を作る。これをもとに加熱プロセスで加熱し、圧延プロセスで所定の厚みと幅、長さに成形する。次に冷却して、金属組織を整えて製品にする。この工程で化学成分も加熱温度、仕上がり温度、引っ張り温度など各因子により、ばらつきが生じる。そのため、全ての鋼板がスペックを満たす設計が必要となってくる。

 この品質制御には古くからモデルベースのフィードフォワード制御が用いられていた。この制御は前工程や、製造条件実験値により、品質を一定にするために、後工程での冷却の仕方を計算などして調整する。これを行うためにコントローラーで実績データと品質データを大量に蓄えてモデルを作る必要があった。

 モデルの作り方は古くから、条件を加味してプロセスが進むごとに計算し、最終製品の材質を決定していた。ただこの方法では、材質に影響する要因が多く、プロセスが複雑であることから製造過程の金属組織がどうなっているかを測ることができなかった。そのため、インプットデータとアウトプットデータをもとにモデルを作成。製造現場では線形回帰モデルを利用していた。

 さまざまな寸法の製品に対して、精度良く品質(材料、幅)を予測するためには、予測モデルは数百ものパラメータテーブルを持ち、それらを調整する必要があった。また、環境変化(製品の変更、製造方法の変更など)に対応し、モデルの精度を維持するため、スタッフが実績データの解析を行い、数百のパラメータを試行錯誤して更新していた。さらに、パラメータの負荷が大きく頻繁に調整を行うことができないため、モデルの精度維持が困難になるなどの課題があったとする。

 こうした、課題を解決するために、同社では「ジャストインタイムモデリング」という手法を十数年前から取り入れている。この手法は、あらかじめモデル式を定めず、インプットが与えられるごとに、要求点近くのデータを重視した、局所的なモデルをその都度構築するという手法だ。

 この手法を採用し1万件程度のデータにより、引っ張り強度など目的変数を検証する実験を実施した。説明変数に目的変数と物理的な因果関係があることが明確な化学成分、加熱条件、圧延条件、冷却条件などを十数個使い、従来の方法(線形重回帰モデル)と新しい手法(局所回帰モデル)を比べてみた。

 その結果、「新しい手法により、予想誤差RMSE(Root Mean Squared Error)が半減した」(茂森氏)と好結果が生まれた。このモデルをプロセスコンピュータで、自動的にセットアップした材質制御システムを用いたところ、機械試験特性の指標の1つである降伏点応力が従来システムと比べて30%低減している。さらに、モデルパラメータのメンテナンスが不要となり、製品品質の向上と製造コストの低減に寄与した。

 この成果を全社展開するために開発支援ツールを作成し、さらにWebシステム化したところ「ソフトウェア管理にかかる工数が大幅に減少し、成果物の品質のばらつきが小さくなるなどの効果を得た」(茂森氏)としている。

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