ソニーは通期業績を上方修正も、赤字続きのスマホ事業で画竜点睛を欠く:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ソニーが2018年度第1四半期決算について説明。全体としては前年同期を上回り、通期業績も上方修正するなど好調に推移している。しかし、スマートフォンを手掛けるモバイルコミュニケーション分野については、業績予想を下方修正するとともに、さらなる下方修正の可能性も示唆するなど厳しい状況が浮き彫りになった。
スマホ事業は業績見通しを下方修正も「さらなる修正もあり得る」
ソニー 代表執行役 EVP CFOの十時裕樹氏が「新中期計画※)の最初の四半期としては順調なスタート」と語るように、全体としては好業績だったが、2016年度から業績悪化の続くモバイルコミュニケーション分野は減収減益となった。売上高は前年同期比27%減の1325億円、営業損益は同144億円悪化の108億円の赤字で、欧州と日本を中心にスマートフォンの販売台数が減少した。「競争環境は厳しい上に、当社商品の商品力が優位とはいえない可能性もある」(十時氏)。
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モバイルコミュニケーション分野の通期見通しは、販売目標台数を下方修正し、売上高が前回予想比300億円減の6100億円、営業損益が同150億円悪化の300億円の赤字とした。十時氏は「競争環境はより厳しくなることから、当期中のさらなる修正もあり得る。その場合には新中期計画の見直しも必要になるかもしれない」と述べ、今後のさらなる下方修正の可能性も示唆した。ただし、今後のソニーの事業で重要な役割を果たす5Gの技術開発のため、モバイルコミュニケーション分野の事業を継続するという「基本スタンスに変更はない」(十時氏)ともしている。
ソニーは、ビジネスリスクのマイナス要因を業績見通しに織り込んでいるが、今回の通期予想ではその金額を、前回の900億円から730億円積み増して1630億円とした。「このうち最も大きいリスク要因がモバイルコミュニケーション分野だ。この他、積層セラミックコンデンサーやメモリなど電子部品の調達価格の高騰なども入る」(十時氏)。
ルネサス大村氏を登用「数カ月以内に責任範囲決めたい」
なお、ソニーは2018年9月1日付の役員人事で、ルネサス エレクトロニクスの車載半導体事業を統括していた大村隆司氏※)を、執行役員 半導体担当常務補佐として登用することを発表している。十時氏は、大村氏について、「半導体分野で豊富な経験と高い専門性を有している人物だ。まずは半導体事業担当常務の清水(照士氏)をサポートしてもらいながら、数カ月以内には責任範囲を決めたい」と述べている。
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