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次世代の車載マイコンはルネサスにしか作れない車載半導体 ルネサス インタビュー(1/3 ページ)

車載マイコン、車載情報機器向けSoCの世界シェアで圧倒的にトップに立つルネサス エレクトロニクス。東日本大震災による主力工場の被災や続くリストラの影響により、競合他社の攻勢に対して防戦一方の状況にあるかのように思える。実際にはどういう状況にあるのか。同社の執行役員常務で、車載分野向け製品担当の第一ソリューション事業本部長を務める大村隆司氏に聞いた。

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ルネサスの大村隆司氏

 2014年10月末に、通算6回目となる希望退職募集を発表したルネサス エレクトロニクス。工場の売却と併せて、2011年以降はそのリストラ施策ばかりが注目されてきた。

 同社が扱う半導体製品の中でも、安定して利益を稼ぎだしているのが車載分野だ。車載マイコンの世界シェアは40%、カーナビゲーションシステムなどの車載情報機器向けSoC(System on Chip)の世界シェアは70%に達する。

 東日本大震災による主力工場の被災やリストラの影響があるルネサスに対して、その高いシェアを奪うべく多くの競合他社が攻勢を掛けている。例えば、車載情報機器向けSoCであれば、IntelやNVIDIA、Qualcommなど、PCやスマートフォン向けのプロセッサで高い実績を持つ半導体メーカーが参入しようとしており、ルネサスは防戦一方であるかのように思える。

 では実際に、ルネサスの車載半導体事業は現在のどのような状況にあるのだろうか。同社の執行役員常務で、車載分野向け製品担当の第一ソリューション事業本部長を務める大村隆司氏に聞いた。



顧客がまた戻ってきている

MONOist まず車載マイコン事業の現状について聞かせてほしい。東日本大震災以降、自動車業界では2社以上の複数社購買を推進しており、車載マイコンも例外ではない以上、シェアが低下する傾向にあるのではないか。

ルネサスの大村隆司氏
ルネサスの大村隆司氏

大村氏 以前は複数社購買による影響もあって、車載マイコンの顧客が離れて行ったという事例も少なからずあった。しかし現在は、顧客がまた戻ってきているという感触を得ている。

 その理由となっているのが、40nmプロセスという最先端の車載マイコンを製品化し、しっかりと顧客に納入できているという事実だろう。競合他社は、55mや65nmプロセスの車載マイコンまでしか出せておらず、40nmプロセスについては既にギブアップしているという話を顧客から聞くこともある。

 顧客は、現在出せている製品の技術レベルから、さらに次世代の製品が作れるかどうかを考えるものだ。40nmプロセスを製品化できているルネサスしか、その先の次世代車載マイコンを作れないのではないかという意見をいただいたこともある。

MONOist 例えばどういった製品が評価されているのか。

大村氏 先日発表した、運転支援システム向けの40nmプロセス車載マイコンは、デュアルロックステップ方式によるプロセッサコアなどでISO 26262で最も安全要求レベルが高いASIL Dに対応している。また、次世代の車載ネットワークであるCAN FDやイーサネットに対応し、8Mバイトもの大容量フラッシュを搭載している。これだけ高機能にもかかわらず、消費電力は0.9W以下に抑えている。もちろん20年保証や0.1ppm以下の故障率、150℃までの動作温度範囲という、車載マイコンに求められる要件も満足している。運転支援システムの採用が進む中で、この車載マイコンは1つの業界標準になるのではないかと考えている。

運転支援システム向けの40nmプロセス車載マイコン「RH850/P1x-Cシリーズ」の機能
運転支援システム向けの40nmプロセス車載マイコン「RH850/P1x-Cシリーズ」の機能(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス

 今思うのは、実績や有言実行による信頼回復がいかに大切かということだ。東日本大震災のときには、顧客から「もうモノを作れないんじゃないか」と言われるほど厳しい状況だった。その後にリストラもあった。しかし、そういった中で危機感が高まるほどわれわれの結束は強くなり、40nmプロセスの車載マイコンをはじめとする製品の開発をしっかりと行えた。先述の40nmプロセスマイコンは一発完動だったほどだ。

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