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次世代の車載マイコンはルネサスにしか作れない車載半導体 ルネサス インタビュー(2/3 ページ)

車載マイコン、車載情報機器向けSoCの世界シェアで圧倒的にトップに立つルネサス エレクトロニクス。東日本大震災による主力工場の被災や続くリストラの影響により、競合他社の攻勢に対して防戦一方の状況にあるかのように思える。実際にはどういう状況にあるのか。同社の執行役員常務で、車載分野向け製品担当の第一ソリューション事業本部長を務める大村隆司氏に聞いた。

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車載情報機器向けSoCはおいしいビジネスなのか

MONOist 車載情報機器向けSoCでは、スマートフォンなどの民生用機器でSoCの実績を持つ企業が続々と参入している。ルネサスがシェア70%を維持するのは困難ではないのか。

大村氏 以前は私もそうなるのではないかと危惧していた。しかし、そう簡単に参入できるわけではないことが顧客の話から分かってきた。

 スマートフォンと車載情報機器を比較するとその理由が分かりやすい。スマートフォンは、基本的に1個の画面を操作する製品だ。一方、自動車メーカーやティア1サプライヤが開発している次世代の車載情報機器は、カーナビゲーションなどを表示するヘッドユニット部の画面だけでなく、ディスプレイメーターやリアシートエンターテインメントシステムなどの複数の画面を、1個のSoCで同時かつ安定的に動作させたいという要求がある。

 そのためには同時に動作させられるバスマスターの数がかなり必要になる。スマートフォン向けのSoCは、同時動作可能なバスマスター数が6個程度しかないので、この要求に対応できない。当社のSoCは、独自のバスアーキテクチャにより30個以上のバスマスターを同時に動作させられるので、この要求を満たせる。

 実際に、スマートフォン向けSoCで実績を持つ半導体メーカーの製品を検討した顧客もいるが、その多くが当社の製品でなければ次世代の車載情報機器を開発できそうにないという認識を深めたようだ。スマートフォン向けSoCを転用するだけで参入できるような容易な市場ではない。

ルネサスの「統合コックピットデモ」
ルネサスの「統合コックピットデモ」。複数の画面を用いる次世代の車載情報機器をイメージしたドライブシミュレータだ(クリックで拡大)

MONOist 車載情報機器向けSoC市場には、参入を目指すだけのうまみはあるのか。

大村氏 これは個人的な意見だが、車載情報機器向けSoCはそんなにおいしいビジネスではないと思う。自動車の生産台数は、PCや携帯電話機と比べてはるかに少ない。新たに車載情報機器に求められる要件を満たすSoCを開発し、自動車メーカーやティア1サプライヤが要求する耐久性や堅ろう性に応えるには、労多く得るものは少ないというのが実態ではないだろうか。利幅も、PCやスマートフォン向けSoCと比べればはるかに小さい。

 そんな市場に、既にPCやスマートフォン向けのSoCで高い利益を上げている企業が本気で参入しようと考えているのか疑問符が付くところだ。

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