買収されて成長、古参IoTプラットフォーム「ThingWorx」に見るWin-Winの関係:IoT観測所(47)(3/3 ページ)
世の中に数多あるIoTプラットフォームの中でも比較的古参に属するのが「ThingWorx」だ。2009年の創業から「IoTに特化した最初のプラットフォーム」として展開を続けた後、2013年にはPTCに買収された。この買収でThingWorxはさらなる成長を遂げたが、PTCにとっても既存の製造ITツールの落ち込みをカバーできるというWin-Winの関係となった。
買収によるThingWorxの機能強化が続く
ThingWorxそのものの強化も続いている。先にAxedaの話を紹介したが、これに続き2015年5月に自動分析プラットフォームを提供しているColdLight、同年10月にAR(拡張現実)のプラットフォームを提供するVuforiaを買収。そして同年12月には産業オートメーション向けプラットフォームを提供するKepwareを買収した※3)。
※3)関連記事:整備が進むThingWorxの製品ラインアップ
ColdLightのソリューションはThingWorxに「ThingWorx Analytics」としてそのまま組み込まれ、VuforiaのARプラットフォームは「ThingWorx Studio」という開発ツールとして提供されるようになった(ただし2018年6月からは、AR関連のブランド名称をVuforiaに戻しており、ThingWorx StudioはVuforia Studioとなっている)。
こうした強化の効果もあってか、2016年のPTCの決算報告を見ると、ThingWorxを扱うIoTグループの売上高は8030万米ドル(約89億1700万円)で、前年の5290万米ドル(約58億7400万円)から大きく伸ばしている。ちなみにPTC全体の売上高は11億4050万米ドル(約1266億円)なので、比率は7%程度でしかない。しかし、従来のPTCのビジネスを扱うソリューショングループは、売上高を12億240万米ドル(約1359億円)から10億6020万米ドル(約1179億円)に減らしており、これを補う形のIoTグループの存在感は小さくない。実は2017年度の決算はこれがさらに顕著になっており、ソリューショングループが10億6070万米ドル(約1184億円)で横ばいなのに対し、IoTグループは1億330万米ドル(約147億円)で28%ほど伸ばしており、売上高比率も9%近くになってきた。
PTCとしてはそんなわけでThingWorxに注力せざるを得ないし、またより注力することで売上高をさらに引き上げたいと考えている。そのための手段が、Kepwareの買収であり、これにより2017年にはIIoT(Industrial IoT)向けに「ThingWorx manufacturing apps」を追加している※4)。
※4)関連記事:「ThingWorx 8」に“ネイティブ”な4つの新機能、役割ベースアプリも新たに追加
ThingWorxからみれば、PTC傘下にあることでこうしたさまざまなソリューションを持つ企業を買収して機能を強化できるとともに、PTCの既存の顧客にリーチしやすくなるわけで、これはThingWorxが単独のままでは成し得なかったことだろう。一方のPTCは、ThingWorxの買収でIoT分野に新たな収益の柱を確立することができた。そういう意味ではWin-Winの関係がうまく築けたとして良いのだろう。
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