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買収されて成長、古参IoTプラットフォーム「ThingWorx」に見るWin-Winの関係IoT観測所(47)(2/3 ページ)

世の中に数多あるIoTプラットフォームの中でも比較的古参に属するのが「ThingWorx」だ。2009年の創業から「IoTに特化した最初のプラットフォーム」として展開を続けた後、2013年にはPTCに買収された。この買収でThingWorxはさらなる成長を遂げたが、PTCにとっても既存の製造ITツールの落ち込みをカバーできるというWin-Winの関係となった。

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PTCによる買収で何が起こったのか

 さてこのThingWorxであるが、2013年12月にPTCに買収されることになる※1)。PTCはこの当時、既にCADやCAEなど3D設計ツールの大手であったが、IoTの世界にも当然食指を動かしており、ここでThingWorxを買収することでPTCの顧客に対するソリューションを提供できることになる。加えて、ThingWorxのソリューションに、PTCの持つSLM(サービスライフサイクル管理)やPLM(製品ライフサイクル管理)のツールを組み合わせることは、ThingWorxの顧客にとっても魅力的なものになる。

※1)関連記事:PTC、「モノのインターネット」向けアプリプラットフォーム開発企業を買収

 かくしてPTCは、1億1200万米ドル(約124億円)+アーンアウトで最大1800万米ドル(約20億円)を支払ってThingWorxを買収した。以後はPTCの傘下でThingWorxは成長してゆくことになる。PTCは2014年8月に、セキュアデバイスの接続やリモートサービスソリューションを手掛けるAxedaも買収しており、これもThingWorxに組み込まれることになった(図6)。

図6
図6 下の方にマシンクラウドとして「Axeda」が追加されているのが分かる。出典はPTC LiveWorx Japan 2015のIoTハンズオンラボのプレゼンテーション(クリックで拡大)

 またこの頃からThingWorx上で動くアプリケーションも急速に増え始めている(図7)。

図7
図7 ちなみに現在はPTC Marketplaceに統合されている。原稿執筆時点でThingWorx向けアプリケーションは249個が登録されている(クリックでWebサイトへ移動)

 2016年には、ThingWorxのオープンプラットフォーム対応を発表している※2)。図1に戻ると、当初からさまざまなクラウドサービスへの対応を表明していたものの、これは「技術的につなぐことは可能」というレベルであって、実際にはThingWorx上で動くアプリケーションで対応を行う必要があった。しかしこのオープンプラットフォーム応により、ThingWorxから直接AWS IoTやAzure IoT Hubに接続して利用できるようになった。

※2)関連記事:「フィジカル」と「デジタル」が融合するIoT時代、PTCはオープン化を加速する

 先にも書いたが、ThingWorxの中核は、それこそAWS IoT CoreとかAzure IoT Suiteと同等の機能を提供するものであり、その意味では競合関係にあると言えなくもないのだが、既に多くのユーザーがThingWorxを利用しており、アプリケーションも多数存在する。こうした状況では、AWS IoTやAzure IoTと接続したからといって既存のユーザーが奪われることはなく、むしろAWS IoTやAzure IoTの利用を検討しているユーザーを引き込むことができる目算(というか自信)があるということであろう。

 その一方で、クラウドサービスそのものとしてはThingWorxが自社で提供するものよりもAWSやAzureが提供するものの方がスケールは大きく、またさまざまなコネクテッドデバイスもAWSやAzureに対応した製品や開発キットが多数出ている。

 再び図1に戻ると、これまでの流れはコネクテッドデバイス⇔ThingWorx⇔クラウドサービスという形になっていたが、世の中には直接クラウドサービスにつながるデバイスが増えてきている。そうなるとコネクテッドデバイス⇔クラウドサービス⇔ThingWorxという形の利用が増えてくることになる。2016年のオープンプラットフォーム対応はこうしたトレンドに対応した、と考えれば良いと思う。

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