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買収されて成長、古参IoTプラットフォーム「ThingWorx」に見るWin-Winの関係IoT観測所(47)(1/3 ページ)

世の中に数多あるIoTプラットフォームの中でも比較的古参に属するのが「ThingWorx」だ。2009年の創業から「IoTに特化した最初のプラットフォーム」として展開を続けた後、2013年にはPTCに買収された。この買収でThingWorxはさらなる成長を遂げたが、PTCにとっても既存の製造ITツールの落ち込みをカバーできるというWin-Winの関係となった。

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 世の中に数多あるIoT(モノのインターネット)のプラットフォームとして、比較的古参に属するものに「ThingWorx」がある。2009年に3人のソフトウェア開発のベテランによって創業された同社は、2010年頃から同名のIoTプラットフォームの展開を開始している(2010年当時はまだクローズドβ状態だったが)。

 この当時のThingWorxのうたい文句は「IoTに特化した最初のプラットフォーム」であり、2011年には正式サービスも開始されている。図1が2013年当時のプラットフォーム概要だが、これを見ていただくと分かるように、さまざまなコネクテッドデバイスやデバイスクラウド、それとその当時あったさまざまなビジネスアプリケーションおよび必要ならクラウドサービスの間をつなぐサービスが、ThingWorxが提供するものである。

図1
図1 これはあくまで2013年当時の図であるが、現在も大きくは変わらない(クリックで拡大)

 その意味では、図1の「COMMUNICATIONS」から「REST APIs」までの範囲がThingWorxの中核としてよい。ここは同社がガッチリ作りこむ形で提供されるが、これだけだともちろん機能は足りない。まずユーザーのニーズに合わせてカスタマイズする手段が必要となる。それが「ThingWorx Composer」(図2)で、MBD(モデルベース設計)を利用したアプリケーションビルダーである。ここでIoTデバイスそのものの定義を行って、ビジネスロジックの組み込みやデータの可視化、ストレージやセキュリティなどの要件を盛り込んだアプリケーションを構築できる。

図2
図2 「ThingWorx Composer」によって、アプリケーションのデプロイが10倍高速化される、という話だった。ちなみに2011年頃だと5倍高速と説明があって、ちょっとインフレを起こしているかも

 これをもう少し簡単に行いたい、という向きには「Codeless Mashup Builder」(図3)も用意されている。これはドラッグ&ドロップでアプリケーションを構築できるツールである。もちろんThingWorx Composerに比べると細かな制御には不向きだが、その代わり非常に簡単にアプリケーションの構築が可能である。他にもイベントドリブンエンジンと組み合わせる「3D Storage」およびこの3D Storageを利用する「SQUEAL(Search, Query and Analysis)」は、当時の一般的なリレーショナルデータベース(RDB)と比較して10倍高速という触れ込みであった。

図3
図3 コンセプト的にはNode-REDに近い(いや順序から行けばこちらが先なのだが)

 ちなみに、当時の同社の説明は「50Billion Connected Things will require 5 Million Connected Applications」である。「500億個のコネクテッドデバイスは、500万種類のアプリケーションを必要とする(要するに1万個のコネクテッドデバイスをぶら下げるアプリケーションが500万個ある、という話だ)」というビジョンの基、その500万種類のアプリケーションをいかに迅速に構築するか、という問いに対する解がThingWorxというわけだ。

 もっとも、2011年とか2013年とかいう時期では、まだIoTという言葉そのものもあまり普及しておらず、それもあってか当時のThingWorxの説明は、既存のプラットフォーム(図4)との対比(図5)という形でそのメリットを説明しようとしている。

図4
図4 既存のシステムは、個別に構築されている。Peopleは、今で言えば「Slack」あたりが一番近いのかも
図5
図5 「ThingWorx」を使うとこれが統合できる、という話

 これだけ見ていると、IoTのプラットフォームというよりは何かエンタープライズ向けITシステムという感じに見えてしまいがちであるが、実のところ実現しようとした(というか実現した)のは、例えば今の「AWS IoT」が実現しているものにかなり近い。ThingWorxは「AWS IoT Core」に近く、ただしそれがクラウドではなくオンプレミスで実行されている形だ。SQUEALは強いて言えば「AWS IoT Analytics」で、「Mashup Builder」は結果的に言えば「AWS IoT 1-Click」あたりだろうか。

 ただし、こうしたサービスの実現時期はもちろんThingWorxの方が圧倒的に早い訳で、こうした潜在的な能力を早期から見いだしたユーザーを次々に集めることになった。

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