PoCの壁をどう超えるのか、「IoX」に取り組むNSSOLの教訓:製造ITニュース
新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)は2018年7月25日、同社が推進するIoTソリューション「IoXソリューション」の取り組み状況を紹介するとともに、今後の方針について発表した。
新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)は2018年7月25日、同社が推進するIoT(モノのインターネット)ソリューション「IoXソリューション」の取り組み状況を紹介するとともに、今後の方針について発表した。
人の要素を加えたIoXソリューション
NSSOLが訴える「IoX」とは、IoT(Internet of Things)に、「ヒトのインターネット」を意味するIoH(Internet of Humans)も組み合わせ、モノと人を組み合わせた現場を高度化するソリューションとする意味が込められている。2016年4月にIoT関連ソリューションをまとめた「IoXソリューション事業推進部」を設立し「IoXソリューション」の開発と実証実験に取り組んできた。
NSSOLが「IoXソリューション」を展開する強みとして挙げるのが、新日鉄住金グループである強みを生かし、プラントを中心にさまざまなフィールド実証を進められる点だ。これに加えて、システム研究開発センターやパートナーアライアンスなどで先進ITを活用できる点、製造業や流通分野でのエンタープライズITのシステム導入実績が多いため、これらとIoXソリューションを組み合わせてビジネス価値を早期に得られる点などを強みとしている。
NSSOL IoXソリューション事業推進部長の東條晃己氏は「現場目線でさまざまな事業分野に適合したソリューションを提供できることが特徴だ。上位システムとの連携なども容易に実現できる」と強調する。
これらの実績を生かし2年間で本番導入とPoC(概念実証)を合わせて54件を導入したという。東條氏は「本番導入は13件で、PoCとの間に障壁がある。もう少し本番導入を増やしたいのが本音だが、参入当初の計画としてはほぼ計画通り。順調に環境が整ってきた」と語る。
導入実績としては新日鐵住金の製鉄所におけるフィールドテストにより磨いたIoHソリューション「安全見守りくん」や遠隔作業支援および作業ナビゲーションシステム「ARPATIO」、物流支援ソリューションなどがあるという。
さらに新たに2018年7月25日には新日鉄住金エンジニアリング向けにIoXソリューションを導入し2018年4月から本格運用を開始したことを発表した。今回導入したのは、NSSOLのIoXプラットフォーム上に構築された「プラント操業分析システム」と「ナレッジベースシステム」「データ分析環境」を組み合わせたもの。過去の運転実績を基に、運転データから異常を検知し、プラントの安定した運転と高度な保全をサポートする。
今後に向けてはさらに本番導入拡大を加速させていく方針。東條氏は「これまでの取り組みでの教訓として人の要素を加えた『IoXソリューション』そのものへの引き合いは正しいと感じている。現状ではデータの蓄積と見える化を中心としていたが、分析や新たな価値の創出にこれから踏み込んでいきたい」と述べている。
一方で「PoCの壁を突破してどのように本番導入まで取り組むかということは課題だ」と東條氏は述べる。
東條氏は「多くのITベンダーと異なり、われわれは製造現場側への提案中心で評価を得ている。ただ、PoCは進んでも、導入へと広がる時には経営層やIT部門との合意が必要となる。従来はそこに至らないケースが多かった。現場や経営層、IT部門などを結ぶチームビルディングを意識して導入提案を進めていかなければならないと気づいた。NSSOL内でエンタープライズITシステムを提案するフロントビジネスユニットと連携しながら最適な導入の形を構築し、PoCの壁を越えて最適な価値を提案できるようにしたい」と述べている。売上高については「当初は2020年に売上高30億円を目指すとしていたが、目標を50億円に引き上げた。現状はその計画をトレースしている」と東條氏は意欲を示している。
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