IoTプラットフォームが引き出すスマート工場の真の価値:IHS Industrial IoT Insight(7)(1/3 ページ)
今後の製造業の発展に向けて必要不可欠とみられているIoT(モノのインターネット)。本連載では、IoTの現在地を確認するとともに、産業別のIoT活用の方向性を提示していく。今回は、スマート工場におけるIoTの価値がどのような仕組みで実現されていくかについて紹介する。
筆者は本連載の第1回で、「モノ(機器)にセンサーがついてインターネットにつながり、そこからデータが取得され、それらがクラウド(あるいはエッジ、フォグ)を介して分析、制御などに活用できるようになる。つまり、IoT(モノのインターネット)の価値とは、モノから吸い上げられたデータを、家や街、インフラ、クルマなどのモビリティ、工場や店舗などの経済活動に活用できることと考えられる」と述べた。
今回は、スマート工場におけるIoTの価値が、どのような仕組みで実現されるようになっていくかについて具体的な事例を中心に触れていく。
ボッシュの事例
スマート工場、インダストリー4.0、インダストリアルインターネットなどと呼び方は異なるものの、モノづくりをスマート化することで、付加価値を高める活動が国内外で進められている。中でも、日本のモノづくりの中心的な存在といえる自動車をはじめとした組立/加工型産業においては、アジアやドイツでも具体的な事例が多くみられている。
図1は自動車部品などをグローバルに展開するボッシュ(Robert Bosch)グループの製造業向けIoTの活用事例である。
ドライバーにセンサーを搭載して、ネジ締めの強度を測定。データを取得してシステムで分析することにより、ネジ締めのばらつきを低減し品質管理の向上に役立てている。
周知の通りボッシュは、自動車部品だけでなく電子部品や家電など多様な製造業をグループで展開している。2013年頃から、自社の多品種生産ラインでは、このようなセンサーだけでなく、RFIDやLEDなどを活用したタクトタイムの管理を行っている。つまりこういったシステムは、自社内で培われ、活用されてきたものが外部向けのソリューションになってきたといえる。
リアルからネット、そしてリアルへの価値の還元
ボッシュの事例に似通った取り組みは、GEの産業用IoTプラットフォーム「Predix」などで、既に多くのモノづくりの現場で使われるようになってきている。連載第1回で筆者は、海外企業の場合、IoTプラットフォーム(特にSaaSやPaaSなどクラウドサービスによって)からこういった仕組みを構築、運用する特色が強いと述べた。しかし実際には、スマート工場と「外の世界とのつながり」がいまだ途上段階にあることから、現時点ではIoTプラットフォームによる仕組みの構築はコンセプトにとどまっている。
ボッシュの事例をみると、物理的なデータの取得と活用に関しては、至ってシンプルだ。リアル(現場)からネット(クラウド)に上げられ、リアルで活用するというサイクルは、現在の日本がスマート工場と呼んで行っていることと同じである。ボッシュは、これらのシステムを日本企業向けに展開するにあたり、NTTデータグループと協業している(関連記事:インダストリー4.0のノウハウを国内へ、ボッシュとNTTデータEASが提携)。
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