IoTプラットフォームが引き出すスマート工場の真の価値:IHS Industrial IoT Insight(7)(2/3 ページ)
今後の製造業の発展に向けて必要不可欠とみられているIoT(モノのインターネット)。本連載では、IoTの現在地を確認するとともに、産業別のIoT活用の方向性を提示していく。今回は、スマート工場におけるIoTの価値がどのような仕組みで実現されていくかについて紹介する。
外の世界とのつながり
一方、今後の動向として注意すべきはやはり「外の世界とのつながり」に対する取り組みである。ボッシュの事例の他、三菱電機の「e-F@actory」(同社のFA関連機器やソフトウェアを提供する企業との連携を図るプログラム)にSAPが参加するなど(関連記事:製造業向けIoTサービスを展開、SAPが「e-F@ctory」に参加)、製造業向けIoTの世界では、リアルを守備範囲とするメーカーと、クラウドサービスプロバイダーとの連携が加速している。
これらはまさに、スマート工場がクラウド=外の世界とつながる際のプラットフォームづくりへの動きと筆者は捉えている。図2に示すように、IoTプラットフォームは全ての要素への関与が必要とされる。しかし、モノづくりの現場において、データを上げるクラウドとリアルの関係は非常に密接かつ多岐にわたることから、IoTプラットフォームを構築するにはレイヤーを超えた協業が不可欠だ。
外の世界とのつながりからクラウドサービスとしての展開へ
ドイツが国策的に推進するインダストリー4.0において重要なポジションにあるボッシュやSAPは、工場のIoT化においてクラウドを全面的に活用している。ここでは、クラウドが単にデータを蓄積/分析する場所ではなく、さまざまなつながりを生み出すインターネットとして利用されている点がポイントだ。
ドイツは製造業がGDPに占める比率が高い。直近では日本を上回る20%程度になっており、世界でもトップクラスの水準である。また、フォルクスワーゲン(Volkswagen)、ダイムラー(Daimler)、BMWのような大手自動車メーカーに加え、メガサプライヤーであるボッシュ、またさらにそのサプライヤーである中小企業など、ドイツの製造業のサプライチェーンは裾野が広い。
筆者としてはここでクラウドサービスの台頭を指摘したい。例えば、ドイツにおいて自動車を完成させるには完成車メーカーだけでなく、ティア1(大手電装品メーカー)、ティア2(ティア1への部品サプライヤー)以下さらに部材や細かな部品など数多くのサプライヤーが関与している。インダストリー4.0では、こういった多数の中小企業の競争力をITの活用によって向上することが大きな課題になっており、その際にはクラウド=インターネットを介してサプライチェーンにおける情報を共有されることが必須要件とされている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.