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IoTプラットフォームが引き出すスマート工場の真の価値IHS Industrial IoT Insight(7)(3/3 ページ)

今後の製造業の発展に向けて必要不可欠とみられているIoT(モノのインターネット)。本連載では、IoTの現在地を確認するとともに、産業別のIoT活用の方向性を提示していく。今回は、スマート工場におけるIoTの価値がどのような仕組みで実現されていくかについて紹介する。

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課題がありつつも、直近のマインドはポジティブ

 ドイツでは技術力の高い多くの中小企業がこれらのサプライチェーンを支えており、品質管理/工程管理などでのIoT化が国策として重要視されている。これに関してはユーザー側からセキュリティや既存のシステムとの互換対応といった課題がしばしば指摘されている。

 しかし直近の“マインド”がポジティブな方向にある一例をあげておきたい。図3は弊社IHS Markit Technologyの海外アナリストが2017年4月の「ハノーバーメッセ2017」のカンファレンスで行った「2025年までの工場オートメーションにおけるオープンネットワークの導入」についてのアンケート調査結果である。

 3分の1以上が「確立できてはいないものの進捗がある」と回答し、50%が導入の可能性について「Yes」と答えた。一方でNoの回答は12%にとどまった。アンケートは英語で行っているため、おおむね海外企業からの回答と聞いているが、少なくとも、課題は抱えつつも製造業の現場で外の世界とのつながりを見据えたシステム導入の流れが徐々に強まっていることが確認された。

図3
図3 「2025年までの工場オートメーションにおけるオープンネットワークの導入」アンケート結果(クリックで拡大) 出典:IHS Markit Technology

役割が問われるIoTプラットフォーム

 このように、取り入れるレベルに温度差はあるものの、モノづくりのIoT化において外の世界との出入り口ともいえるクラウド、オープンネットワークの普及は今後進むことが見えてきた。ここで役割が問われるのが、IoTプラットフォームである。

 先述したリアル→クラウド→リアルで機能するシステムでは、外の世界とつながらなくてもIoT活用は可能である。一方で、ベッコフオートメーション(BECKHOFF)やファナックなどのFA関連メーカーは、異なるOSへの対応などオープン志向が強い。まだ途上段階だが、今後標準化が進むことで、より多様な機器からのデータ収集/分析および活用にはクラウドサービスが使われることになろう。

 これらを見据えて、メーカー+クラウドサービスプロバイダーの連携に加え、直近では通信キャリアのプラットフォームへの参入も始まった。国内では、NTTドコモをはじめ大手通信キャリアがクラウドサービスプロバイダーとの連携を発表し、最近ではKDDIがIoT通信プラットフォームを展開するベンチャー企業のソラコムを買収するなど、まさにIoTプラットフォームの陣取りといった動きがみられている。

 今後も標準化の動き、ハードウェアのオープン化、そしてIT企業の動向から目が離せなくなりそうだ。

プロフィール

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大庭 光恵(おおば みつえ)

1999年〜ドイツ証券、クレディ・リヨネ証券で産業用エレクトロニクス担当アナリストを担当。その後アセットマネジメント会社にて電子機器、部品、材料、ITサービスをアナリスト/ファンドマネージャーを担当。2012年〜現職、IHS Markit Technologyのアナリストとして、市場分析/ビジネス分析を手掛ける。

IHS Markit Technology
https://www.ihsjapan.co.jp/

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