臓器上で金触媒によるカップリング反応を発見、副作用のない薬へ:医療技術ニュース
理化学研究所は、マウスの臓器上で金属触媒によるカップリング反応が起こることを発見した。生体内で有機合成反応ができる範囲が大幅に広がったことで、薬を疾患部位上で合成できるようになり、副作用のない薬の開発につながる。
理化学研究所は2018年6月28日、マウスの臓器上で金属触媒によるカップリング反応(新しい分子が生成する反応)が起こることを発見したと発表した。同研究所開拓研究本部 主任研究員の田中克典氏らの共同研究チームによる研究成果だ。
田中氏らはこれまでの研究で、生体内で金属触媒を運んだり、生体分子から金属触媒を守ったりする「糖鎖アルブミン」を開発。この糖鎖アルブミンを用いて「3価の金触媒(Au3+)」をマウスの肝臓や腸管に運び、臓器上で金属触媒反応を起こすことに成功している。
この際の触媒反応は、臓器表面上にあるアミノ基とプロパルギルオキシ基を持つエステル(プロパルギルエステル)との間のアミド化反応だった。今回、研究チームは、難しいとされてきた生体内での金属触媒反応が効率的に進行した理由と、その反応の仕組みについて詳しく調べた。
さまざまな3価の金触媒を用いて、フラスコ内でプロパルギルエステルとアミノ基とのアミド化反応を試したところ、ベンゼンとプロパルギルエステルのアセチレンとの間で、金触媒による炭素−炭素結合形成反応を経て2分子のカップリングが起こっていることが分かった。
さらに、この反応機構を基にして、さまざまなタンパク質のアミノ基に対するプロパルギルエステルのアミド化反応を調べた。これにより、2-ベンゾイルピリジンを配位子として持つ金触媒を用いた新しい標識技術を確立した。
今回の成果により、哺乳動物の体内で有機合成反応ができる範囲が大幅に広がった。これまで、副作用や体内での不安定さを懸念して使うことができなかった薬を疾患部位で合成できるようになり、副作用のない薬の開発につながることが期待される。
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