医薬品で副作用を引き起こす分子内の相互作用を解明:医療技術ニュース
東京大学大学院 薬学系研究科 教授の嶋田一夫氏らが、医薬品の副作用を引き起こす受容体分子の構造変化を解明した。医薬品の治療効果を維持しながら、副作用のみを軽減させる、新しい医薬品開発につながる研究成果だ。
日本医療研究開発機構(AMED)は2018年1月15日、東京大学大学院 薬学系研究科 教授の嶋田一夫氏らが、医薬品の副作用を引き起こす受容体分子の構造変化を解明したと発表した。
医薬品の30%以上は、GPCR(Gタンパク質共役型受容体)と呼ばれる膜タンパク質に作用して治療効果を発揮するが、同時に副作用が生じることが課題だった。これは、医薬品がGPCRを介して治療効果のシグナルと副作用のシグナルの両方を細胞内に流してしまうことに起因する。研究グループは、治療効果および副作用を発揮するGPCRでどのような構造上の違いがあるかを調べた。
溶液核磁気共鳴(NMR)法により、代表的なGPCRであるβ2アドレナリン受容体(β2AR)を対象として、副作用発現の第一段階にあたるC末端領域がリン酸化された状態とアレスチンが結合した状態の構造を解析。その結果、C末端領域がリン酸化に伴ってβ2ARの膜貫通領域の細胞内側と相互作用することが分かった。
また、この相互作用によりβ2ARの膜貫通領域の構造が変化すること、さらにこの構造がアレスチンが結合した状態の構造と類似していることが確認できた。
これは、リン酸化されたGPCRの細胞内領域で形成される分子内の相互作用が、アレスチンの結合やそこから副作用の発現につながるシグナルを活性化することを示す。つまり、分子内相互作用を阻害するような化合物を従来型の医薬品と併用すれば、治療効果を発現しつつ、副作用のみを軽減させるような効果を持つと考えられる。
同研究は、日本医療研究開発機構次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業「天然化合物及びITを活用した革新的医薬品創出技術」、経済産業省の研究補助金によって行われた。
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