2021年に車載2.5兆円は変わらず、受注の進捗は50%:製造マネジメントニュース
パナソニックはアナリスト向けのイベント「Panasonic IR Day」を開催し、2021年度に向けたオートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社の中期戦略などを発表した。
パナソニックは2018年5月30日、アナリスト向けのイベント「Panasonic IR Day」を開催し、2021年度に向けたオートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社の中期戦略などを発表した。
2016〜2018年度の中期経営計画でAIS社は、2018年度に車載事業で売上高2兆円を達成することを目指していた。この目標は1年遅れて2019年度にクリアする見通しだ。2018年度の車載事業の売上高は1.8兆円を見込み、売上に対する受注率は96%だという。2019年度に達成するという車載事業の売上高2兆円に向けては受注率が84%に達している。
従来より掲げる「2021年度に車載事業で売上高2.5兆円を達成し、自動車部品メーカーとしてトップ10入りする」というAIS社の中長期目標は据え置く。現時点で2.5兆円に対する受注率は50%だ。
AIS社は「オートモーティブ事業」「エナジー事業」「インダストリアル事業」の3事業を展開する。このうち、オートモーティブ事業ではIVI(車載インフォテインメント)とコックピット、ADAS(先進運転支援システム)、電動化を重点4カテゴリーと位置付け、収益面の成長を実現する。
2021年度に向けてオートモーティブ事業は、IVIとコックピットを統合したシステムでシェアを拡大する。また、画像認識技術を活用した低速域向けのADASや自動駐車の受注活動や、中国市場や欧州市場で進む電動化への対応にも注力する。重点4カテゴリーの製品のハードウェアを通じてモビリティサービスにも貢献する方針だ。
AIS社 上席副社長 オートモーティブ事業担当の柴田 雅久氏は「自動車メーカーがIVIを自前で開発しようとした時期があったが、各社とも失敗したことでわれわれには追い風になっている」とコメント。IVIの開発では、LinuxとAndroidの両方に対応できる点や、開発資産を流用したコスト削減を強みとして受注につなげる。
車載用電池を扱うエナジー事業は、電動化で需要拡大が見込まれるものの、量を追うだけでなく収益や投資回収など質を重視して生産体制を強化していく。液晶パネルを生産していた姫路工場では、2019年度から角型の車載用リチウムイオン電池のセルからモジュール組み立てまでを一貫で行い、生産を拡大する。米国ネバダ州のギガファクトリーは、円筒形リチウムイオン電池の生産を年間35GWhに増やす。また、中国の大連工場では、顧客ごとに角型リチウムイオン電池の生産ラインを増強していく。
Tesla(テスラ)やトヨタ自動車といったパートナーとの関係を深化させ、取引拡大につなげていく。円筒形、角型ともに、新しい材料や構造の開発を進め、商品力を高める。車載用電池以外の新たな需要の創出に向けて、データセンター向け蓄電システムや、通信基地局の電源の遠隔監視、二輪車向けのバッテリーシェアリングなどにも取り組む。
インダストリアル事業では、工場の省人化や情報通信インフラ、自動車の電装化といった社会要請の大きい分野に集中し、安定成長を実現する。強みを持つ製品を中心に、モジュール化やダントツの高シェアで収益を高めていく。
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