中国のサンダーソフトは日本市場を引き続き重視、組み込みAI分野で200億円投資:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
中国の組み込み開発ベンダー・サンダーソフトは創業から10周年を迎えた同社の事業戦略について説明。売上高の30%弱を占める日本市場を引き続き重視しており、日本拠点内に独自の研究開発組織を立ち上げ、組み込みAI(人工知能)やエッジコンピューティングの技術開発を行える体制を目指す。
「スマートビークル」と「On-Device AI」
「スマートビークル」では、乗用車だけでなく商用車や建機などあらゆるモビリティを対象としている。今後重要な役割を果たしていくのが、2017年2月に買収したフィンランドのライトウェア(Rightware)だ。デジタルクラスタ向けのUI(ユーザーインタフェース)エンジン「Kanzi」は35社以上のメーカーに採用されており、30%のシェアを獲得しているという。そして、サンダーソフトが開発を手掛けてきた、Android/Linuxベースのカーナビゲーションシステムや、「Android Auto」「Car Life」などのスマートフォン連携システムと、Kanziのデジタルクラスタを一体化した統合コックピットも提案していく。なお、各システムが異なるOSで動作する統合コックピットをスムーズに連携させられるようにハイパーバイザーも提供していく考えだ。
そして全ての市場で重要な役割を果たすとして、日本でも研究開発や投資を始めようとしているのがAIとエッジコンピューティング関連の技術である。サンダーソフトは、中国メディアのciweekが選ぶ、中国AI企業ランキングで第7位に入るなど、AIの技術開発で高い評価を得ている。得意領域としているのが、スマートフォンなどの限られたプロセッサの処理能力や電力といったリソースの制限の中で、効率よくAIのアルゴリズムを実行するための技術になる。これらを「On-Device AI」として、需要が急激に高まっている画像認識や音声認識/音声処理分野に展開しているところだ。また2018年3月には、画像チューニング技術で知られるブルガリアのMM Solutionsを買収するなどして、技術開発力の強化に努めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 芽吹くか「組み込みAI」
第3次ブームを迎えたAI(人工知能)。製造業にとっても重要な要素技術になっていくことは確実だ。2017年からは、このAIを製品にいかにして組み込むかが大きな課題になりそうだ。 - サンダーソフトがNB-IoTプラットフォームの展開を拡大、組み込みAIにも注力
中国のサンダーソフトが、市場が拡大しつつあるIoTと組み込みAI関連の事業展開を拡大している。LPWAネットワークの1つであるNB-IoTに対応する通信モジュールやソフトウェアをパッケージにしたプラットフォームの提案を検討している。組み込みAIについても、データの作成や準備などを行う専門チームを立ち上げて需要を捉える構えだ。 - ルネサスの組み込みAIの性能は10倍×10倍×10倍で1000倍へ「推論に加え学習も」
ルネサス エレクトロニクスは、汎用事業の成長ドライバーに位置付ける組み込みAI(人工知能)技術「e-AI」をさらに強化する。現在のMCU/MPUを用いた組み込みAIによる推論モデルの処理性能を、2018年夏に10倍、2019年末にさらに10倍、2021年にさらに10倍にして1000倍を目指すという。 - エッジに組み込むAI推論モデルを動的に入れ替え、ウフルが「enebular」に新機能
ウフルは、IoTオーケストレーションサービス「enebular(エネブラー)」について、AIのエッジ層での実運用を支援する「enebular AI empowerment」の開発を発表。2018年春から、enebular AI empowermentを用いたPoC(概念実証)を開始し、同年夏〜秋にかけて正式提供を始める計画だ。 - 「IoT向け組み込みAIは1mW当たりや1ドル当たりの性能が重要だ」――クアルコム
クアルコムジャパンは、クアルコム(Qualcomm)のIoT(モノのインターネット)事業戦略について説明。「スマートフォンをはじめ世界に多数出荷されているモバイルの技術がIoTをけん引する。モバイル技術の開発に注力してきたクアルコムも大きく貢献できる」(同社)と強調した。 - IoT製品の開発に最適なプロセッサはSnapdragon、AIも組み込める
クアルコムジャパンとサンダーソフトジャパンが東京都内で合同説明会を開催。クアルコムのプロセッサ「Snapdragon」を中核としたIoT製品の開発に用いるプラットフォームの展開について説明し「AIの組み込みにも対応するSnapdragonこそがIoT製品の開発に最適」と訴えた。