シャープが黒字転換で6年ぶり配当実施、売上3兆円に向けた中計も順調:製造マネジメントニュース
シャープは2018年3月期(2017年度)の連結決算を発表した。業績は前年同から大きく改善し、全ての製品セグメントで売り上げが増加するとともに、2007年度以来10年ぶりに全四半期で最終黒字を達成した。業績や財務状況、今後の事業展開などを踏まえて6年ぶりに配当も実施する。
シャープは2018年4月26日、東京都内で会見を開き、2018年3月期(2017年度)の連結決算を発表した。業績は前年同から大きく改善し、全ての製品セグメントで売り上げが増加するとともに、2007年度以来10年ぶりに全四半期で最終黒字を達成した。業績や財務状況、今後の事業展開などを踏まえて6年ぶりに配当も実施する。
2017年度の売上高は前期比18.4%増の2兆4272億円、営業利益が同44.3%増の901億円、当期純損益は前期の248億円の赤字から、702億円の黒字に転換した。
増収増益のけん引役となった製品セグメントは、液晶テレビや液晶ディスプレイモジュールを手掛ける「アドバンスディスプレイシステム」だ。タブレット端末向けや車載用の中小型ディスプレイ、スマートフォン向けディスプレイの他、中国やアジア、欧州での液晶カラーテレビの販売が伸長した。
液晶テレビは価格下落の影響を受けたものの、中国での好調な販売や、中型パネルのコストダウンが寄与して大幅な増益となった。2017年度のテレビ販売台数は1000万台を超え、海外向けは前年の2倍以上に成長したという。
カメラやセンサーのモジュール、車載カメラなどが含まれる「IoTエレクトロデバイス」のセグメントは、大手顧客の需要変動を受けて想定を下回ったものの、スマートフォン向けのカメラやセンサーなどデバイスが収益に貢献した。
この他にも、「スマートホーム」のセグメントは家電や携帯電話機が好調で、「スマートビジネスソリューション」は海外向けのデジタル複合機やデジタルサイネージの売れ行きが堅調に推移した。スマートホームの営業利益が減少したのは、原材料購入契約の変更などで前期に156億円の利益を計上していたため。スマートビジネスソリューションは価格下落が利益を圧迫した。
セグメント | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 |
---|---|---|---|---|
スマートホーム | 6079 | 10.4% | 437 | -9.7% |
スマートビジネスソリューション | 3311 | 4.2% | 201 | -10.6% |
IoTエレクトロデバイス | 4915 | 18.8% | 51 | -35.9% |
アドバンスディスプレイシステム | 10865 | 29.0% | 37 | 10.4倍 |
(単位:億円) |
中計達成へ2018年度も順調
2019年3月期(2018年度)の業績見通しは、2017年度の実績を大幅に上回る。売上高は前期比19.1%増の2兆8900億円、営業利益は同22.1%増の1100億円、当期純利益は同13.9%増の800億円を見込む。想定為替レートは市場動向を反映して1ドル=110円から1ドル=102円に見直した。
為替レートを保守的な想定としたが、海外向けの白物家電や8Kカメラなどの新製品、中型パネルなどが計画を上回るため業績予想は変更していない。
「日本は売り上げの伸びしろが少ない」(シャープ 代表取締役 副社長執行役員の野村勝明氏)と見込む中、2018年度は海外ビジネスの成長に軸足を置く。海外向けの売り上げ比率は2016年度で7割弱、2017年度は7割強に増えた。これをさらに引き上げることが、中期経営計画の達成につながるとしている。2019年度を最終年度とする中期経営計画では売上高3兆2500億円、営業利益1500億円を目標とする。
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