「初代iPhoneに匹敵するチャレンジ」――「RoBoHoN」はシャープを照らすか:製造マネジメントニュース
シャープのロボット電話「RoBoHoN」が20万円で発売される。「知性と愛着」を掲げるロボット電話は経営再建中のシャープを照らす光となれるのか。
シャープが2016年5月の販売開始を発表した「RoBoHoN(ロボホン)」は、同社とロボットクリエーター 高橋智隆氏との共同開発による愛くるしい外観を持ちながら、通信機能内蔵ロボットではなく、ロボット型スマホとして個人の生活をアシストすることに主眼を置いた製品だ。
同社では白物家電にAIとIoTの概念を導入することで、家電が利用者に寄り添い、利用者に愛着を持って使ってもらうという「ココロプロジェクト」を推進しており、RoBoHoNはその第1弾製品かつ象徴的な存在として、経営再建中である同社の期待を背負う。
このココロプロジェクトにおいて家電は単体で機能を提供する存在ではなく、クラウドに接続され、利用者に適した最適化や新サービスの導入によって進化する存在と位置付けられている。象徴たるRoBoHoNも単体では機能せず、クラウドサービス「ココロプラン」に接続されることで会話や会話からの検索、持ち主に関する学習機能、アプリケーションによる機能追加など、多種多彩な体験をもたらす。
アプリケーション開発のパートナーとしてDLEやJapan Taxi、オージス総研、リクルートライフスタイルなどの名が挙がっており、会話をしながらレシピを提供してくれるアプリや会話でタクシーを呼べるアプリなどが提供される。レシピやタクシー配車アプリはスマートフォンアプリとしてみれば新鮮なものではないが、アプリケーション開発側は「ヒト型のモノとの会話」が大きな魅力に映るようだ。
「タクシーを呼べるアプリは既にスマートフォン用に提供しているが、ビジネスライクな利用にとどまってしまい差別化が難しい。“会話を楽しみながら呼ぶ”ことの新鮮さを感じてもらうとともに、お客さまへのコミュニケーション手段として有効ではないかと感じている」(Japan Taxi 最高執行責任者 兼 コーポレート部長 濱暢宏氏)
また、3年がかりでシャープとプロジェクトを完成させたロボットクリエーターの高橋氏はRoBoHoNをスマホ+ロボットではなく、ヒトと機械の関係性を見直した結果、誕生した「新しい相棒」と表現する。高橋氏は成熟した国家や市場で成長するためにはイノベーションが必要と持論を述べ、「個人ニーズを指向したロボット」に可能性を感じるという。
RoBoHoNは月産5000台の生産を予定しており、フル生産が続けば1年間で6万台、2年間で12万台となり、AIBOやロビの台数に比肩する台数を市場へ送り出すことになる。ただ、シャープは鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下として経営再建を目指す最中であり、肝いり事業であるとしても利益の出ない製品を長期間、手掛ける余力はない。
代表取締役の長谷川祥典 (代表取締役 兼 専務執行役員 コンシューマーエレクトロニクスカンパニー 社長)は「当然、そう思って(売れる)やっている」「向こう1年ぐらいの間には何らかの数字を出したい」と意欲的に語るが、プレゼンテーションで海外販売を視野に入れると説明しながら「いろいろなアイテムがあるので鴻海には全てを説明し切れていない」「鴻海との協力についてはまだ話していない」と歯切れの悪さものぞかせる。
ただ、長谷川氏がトップを務めるコンシューマーエレクトロニクスカンパニーについて、シャープの代表取締役社長 高橋興三氏は2015年3月期の決算発表時に「今までにない製品を作り出していく」ことを明言している。
コンシューマー向け製品としては高価な19万8000円(税別)という価格ながら、月産5000台のRoBoHoNがシャープという巨大企業の業績を左右するとは考えにくいが、自社だけで完結しない製品の投入に積極的であるという証を示すとともに、同社の“目の付け所”が鈍っていないことを証明する可能性は十分にある。
「シャープは大企業なのにチャレンジャー。困難な状況にもかかわらずやり遂げてくれたことには感謝しかない。これまでコンセプトしか存在しなかった“ヒト型スマホ”を本当に発売してしまうことは、個人的には初代iPhoneに匹敵するチャレンジではないかと思う」(ロボットクリエーター 高橋智隆氏)
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