スマートファクトリー化で進む“モノづくり”の融合:いまさら聞けない第4次産業革命(22)(3/3 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説していきます。第22回となる今回は「スマートファクトリー化で進む“モノづくり”の融合」をテーマに、製造と設計の変化について説明します。
崩さなければならない設計と製造の壁
設計と製造が一体になって進めなければスマートファクトリー化は進まないのは見えているのですが、そこで難しいのが組織の壁です。
そうなんですよ。自動化領域の拡大を目指しても製造だけでは「どれだけ専用冶具作らないとダメなんだ」という感じで、逆に少し設計変更してもらえれば、すぐに解決するんですが……。
設計側が聞いてくれないというわけね。
その通りなんですよ。今まで設計側の要望通り作るというのが役割だと思っていたので、逆に製造側もそういう提案をする感じではなかったですし、設計側もそういうのを聞く雰囲気がないんです。
よくありがちな話だけど、そういうのを乗り越える役割として社長から生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長にさせられたんじゃなかったの?
ええ!? そうなんですか!
本当に矢面さんはいい性格しているわね。でも、チャンスじゃない。ビジネス側と製造側の両方の役割があるんだから、「一緒に考えましょう」といいやすいじゃない。
そうですね。設計と製造の壁を乗り越えて、より良いモノづくりができるようにちょっと頑張ってみます。
インダストリー4.0やIIC(インダストリアルインターネットコンソーシアム)、IVI(インダストリアルバリューチェーンイニシアティブ)などが出しているスマートファクトリーの参照モデルは、ほぼ全てが、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンの統合を掲げていますが、それにはこの矢面さんの苦悩のような状況があるからだといえます。エンジニアリングチェーンとサプライチェーンの交点となるのがまさに製造現場で、スマートファクトリー化の動きとその高度化の動きを実現するには、まさにこれらのチェーン全体の統合と高度化が必要になるというわけです。
こうした動きは、各団体の参照モデルが示しているように、グランドデザインとしては描かれていますが、既存のビジネスや設備などがある中ですぐに全体で理想通りの姿を実現しようというのは多くの企業にはむずかしいと考えます。そういう意味では、まずは、効果の大きそうな製品や製造ラインで、製造現場を中心に設計と製造が協力して新たなモノづくりを構築するという取り組みを行ってみることが重要だと思います。そこで成果が出れば、それを仕組み化し、その領域を広げていくという流れが自然ではないかと考えています。
さて今回は、スマートファクトリー化と設計と製造の壁について説明しました。既にこうした動きをイメージしたプラットフォームやITツールなどは存在していますが、いきなりこうしたツールに頼るのではなく、自社内のどういう点で効果を発揮するのかを検討することが大事だと考えます。次回は、2018年4月23〜27日に開催されたドイツのハノーバーメッセでのインダストリー4.0の動きを紹介したいと思います。
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