第4次産業革命で変わる検査と品質向上の取り組み:いまさら聞けない第4次産業革命(21)(1/3 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説していきます。第21回となる今回は、IoTやAIを活用することで品質向上への取り組みがどのように変化するのかという点を紹介します。
本連載の趣旨
本連載は、「いまさら聞けない第4次産業革命」とし、第4次産業革命で製造業が受ける影響や、捉える方向性などについて、分かりやすくご紹介していきたいと考えています。ただ、単純に解説していくだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介します。
※)本連載では「第4次産業革命」と「インダストリー4.0」を、意味として使い分けて表記するつもりです。ドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0はもともと第4次産業革命という意味があります。ただ、本稿では「第4次産業革命」は一般用語として「IoT(モノのインターネット)による製造業の革新」を意味する言葉として使います。一方で「インダストリー4.0」はドイツでの取り組みを指すものとします。
本連載の登場人物
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、話が始まる。多少優柔不断。印出研究所に入り浸っている。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。第4次産業革命についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
前回のあらすじ
第20回:「第4次産業革命であらためて強調したい『モノの価値』」
あらすじ背景
従業員200人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「新聞で読んだけど、君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われます。しかし、「第4次産業革命」といわれても「それが何なのか」や「どう自分たちの業務に関係するのか」がさっぱり分かりません。そこで、矢面氏は第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺うことにしました。
さて前回は、第4次産業革命でいわれるような「データの重要性」が高まれば高まるほど、「モノの価値」もあらためて再認識されるようになるという点について解説しました。
「データ」が大事になるからこそ、重みを増す「モノの価値」があるのに。
第4次産業革命で重要になるのは「データ」であるということは再三この連載でも協調してきました。しかし、IoT(モノのインターネット)に関する多くの実証が進められるようになり、データはとにかくやみくもの数多く集めれば良いというものではないということが明らかになってきました。そこであらためて「どういうデータをどのように取るのか」という重要性が見直されました。正しいデータを取るという末端の「モノ」の役割は、従来とは異なる意味で重要性を増しているといえるわけです。
また、こうした動きは、データ分析にAI(人工知能)関連技術を活用する現在の動きとしても重要な意味を持つという話でした。
当面は逆にAIは「モノ」に引っ張られるという言い方もできるわ。
現在のAIブームをけん引する核となる技術は「統計的機械学習に基づいた深層学習」です。統計的機械学習は正しい解答ありきの従来のシステム開発とは真逆で、とにかく適当に処理を試してみて、より答えへの効率の良いものを生み出すというアプローチを取ります。帰納的な構造でアルゴリズムを生み出すのです。そのため、ハードウェアも含めた外部環境を固定化し、その同じ環境内で学習を繰り返すことで、最適な結果を効率よく達成する高確率な方法を生みだすことができるということになります。学習条件を固定化するためには、「モノ」の精度や再現性なども重要な要素となり、そういう意味で「モノ」の価値があらためて問われているといえるわけです。
さて、今回はこれらの「モノの価値」と「データ」の関係性の変化を踏まえて、あらためて「品質向上」に対するアプローチがどう変わるのかということを紹介していきたいと思います。
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