優れたチームワークを社会行動の数理モデルで再現、上級者をまねるヒントに:医療機器ニュース
名古屋大学は、洗練されたチームワークに見られる連携した動きを社会行動の数理モデルで再現することに成功した。さらに、上級者に類似した動きを導く練習道具を開発した。
名古屋大学は2018年2月23日、洗練されたチームワークに見られる連携した動きを社会行動の数理モデルで再現することに成功したと発表した。この研究は、同大学総合保健体育科学センター 講師の横山慶子氏らの研究チームによるものだ。
社会行動の数理モデルは環境や他者から個人に対して働く「見えない力」を定式化したものだ。研究では、この社会行動の数理モデルがチームワークの再現にも応用できると考え、サッカーの3対1ボール保持課題を行う3者のチームワークを題材とした。プレイエリアからボールが出ない範囲で、3人の攻撃側プレイヤーが1人の守備プレイヤーにボールを奪われないようにパスをつないでいくルールだ。
次に、個人に働く「見えない力」として、プレイエリア内の自身の位置を察知してとどまる「空間力」、相手プレイヤーとの相対的な位置関係を察知して相手から遠ざかる「回避力」、チームの仲間との相対的な位置関係を察知して調整する「協調力」といった3種類を仮定した。
3つの力の大きさは、距離に依存して線形に変化すると仮定し、距離に応じて働く見えない力の度合いの違いをパラメーターとして再現。その結果、チームワークをうまく機能させるには、この3種類の力を敏感に察知して行動に移す必要があることが示唆された。
また、上級者のような洗練されたチームワークの実現には、空間や相手プレイヤー、仲間プレイヤーとの相対的な位置関係から生じる見えない力を敏感に察知して動くことが示唆された。特に、仲間のプレイヤーからの協調力を察知する能力が重要だと判明した。
さらに、3者のプレイヤーをゴムバンドでつなぐ練習道具を開発し、協調力の一部を張力によって再現したところ、上級者に類似した動きが確認された。
これまで定式化が難しかったスポーツにおけるチームワークのような目標思考的な現象にも社会行動の数理モデルが適用できることが示され、今後はさらに複雑なチームの振る舞いへの応用も期待される。
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