次世代型補助人工心臓の開発へ、医療機器ベンチャー企業を買収:医療機器ニュース
帝人が、補助人工心臓を開発するメドテックハートを買収すると発表。株式譲渡契約により、帝人はメドテックハートが開発を進める体外型補助人工心臓「MT-Mag」の日本および海外での承認取得、販売に向けて、本格的な取り組みを開始する。
帝人は2018年2月28日、エムスリーアイと株式譲渡契約を締結し、エムスリーグループの投資会社が保有するメドテックハートの株式(発行済み株式の93.8%)を全て取得することで合意したと発表した。同年3月末に株式譲渡をし、正式な手続き完了後、「帝人メドテックハート株式会社」に社名変更する。なお、買収対象にはドイツの子会社である「MedTecHeart」を含む。
今回の株式譲渡契約により、帝人グループは、メドテックハートが2011年から開発を進めている体外型補助人工心臓「MT-Mag」の日本および海外での承認取得、販売に向けて本格的な取り組みを開始する。
医療機器事業の拡大に積極的に取り組んできた帝人は、メドテックハートが開発する補助人工心臓の製品優位性を高く評価した。また、メドテックハートの技術を活用することで、より質の高い医療機器を提供できると判断した。
MT-Magは「完全磁気浮上遠心式ポンプ」の採用により、外壁との接触や発熱による血液損傷を受けにくい。また、補助人工心臓の重大な有害事象の1つである血栓の発生頻度を減少させる効果が期待される。
現在、日本で承認されている補助人工心臓は、半日程度使用する短期間タイプや1年以上使用する長期間タイプに比べて、1週間から1カ月程度使用する中期間タイプが少ない。MT-Magは、重症心不全患者の利用ニーズが高い30日間使用可能なタイプで、心機能回復に向けたサポートや次の治療手段を決断するまでの間に用いる補助人工心臓として活用できる。
今後、帝人グループはMT-Magの研究開発に注力し、欧州で2021年以降、日本で2024年以降の承認取得、販売開始を目指す。また、メドテックハートがこれまで培ってきた技術やノウハウを有効活用して、循環器領域や、補助人工心臓と関連の深い呼吸器不全領域での医療機器開発に取り組んでいく。
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