薄型で伸縮自在なスキンディスプレイに表示できるセンサーシステムを開発:ウェアラブルニュース
東京大学と大日本印刷は、薄型で伸縮自在なスキンディスプレイの製造に成功。スキンセンサーで計測した心電波形の動画を、皮膚上に貼り付けたスキンディスプレイに表示できるセンサーシステムを開発した。
大日本印刷は2018年2月19日、薄型で伸縮自在なスキンディスプレイの製造に成功し、スキンセンサーで計測された心電波形の動画を皮膚上に貼り付けたスキンディスプレイに表示できるセンサーシステムを開発したと発表した。同研究は、東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授らと、大日本印刷との研究チームによるものだ。
今回開発されたスキンディスプレイは、16×24個(画素数384)のマイクロLEDが薄いゴムシートに等間隔で埋め込まれており、全体の厚みは約1mm。伸縮自在で、繰り返し45%伸縮させても電気的・機械的特性が損なわれない。皮膚に直接貼り付けても動きを妨げず、装着時の負担を大幅に低減した。
独自の伸縮性ハイブリッド電子実装技術により、マイクロLEDのような硬い電子部品と伸縮性のある配線を混載したゴムシートを伸ばしても壊れないのが特徴だ。硬い素材と柔らかい素材の接合部分に大きな応力が集中するのを避ける構造を採用し、機械的な耐久性を大きく向上させた。また、伸縮性の配線にはスクリーン印刷法による銀配線、マイクロLEDの実装には一般的なマウンタとはんだペーストが使われ、量産性に優れ、早期の実用化と将来の低コスト化が期待できる。
最も伸ばした状態と最も縮めた状態の解像度はそれぞれ4mmと2.4mm、同じく実効的な表示面積はそれぞれ64×96mmと38×58mmだ。マイクロLEDの大きさは1.0×0.5mm、発光波長は630nm(赤色)、駆動電圧は2V。パッシブマトリクス方式(トランジスターやダイオードなどの能動素子を使わない方式)で駆動され、表示スピードは60Hz、最大消費電力は13.8mWとなっている。
今回の研究では、メモリに保存した心電波形の動画をスキンディスプレイに表示した。心電波形は、皮膚呼吸できるナノメッシュ電極と無線モジュールを組み合わせたスキンセンサーで計測する。計測されたデータはスマートフォンで受信してリアルタイムで波形を確認したり、クラウドやメモリに保存することができる。これまで、ナノメッシュ電極を活用して温度、圧力、筋電を計測していたが、今回、心電波形の計測が可能になった。
伸び縮みするディスプレイや皮膚に貼れるレベルの極薄ディスプレイは、研究開発段階のものが数件報告されているだけだった。発光素子として無機半導体を発光材料としたマイクロLEDと独自の電子実装技術により、従来の伸縮性ディスプレイを大きく上回る大気安定性と機械的耐久性を同時に達成した。
今回のシステムの応用によって、生体信号の計測から情報の表示までの一連の流れをユーザーの負担なく実現でき、病院と自宅をスムーズにつなぐ在宅ヘルスケア情報サービスでの活用などが考えられる。今後、大日本印刷では、伸縮性を有するデバイスの構造最適化による一層の信頼性向上、製造プロセス開発による高集積化、大面積化といった課題を解決し、3年以内の実用化を目指すとしている。
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