「つながる工場」のデータ連携も視野に、IVIが新たな実践戦略を披露:スマートファクトリー(4/4 ページ)
IVIは新たな「つながるモノづくり」の実現に向けたグランドデザインとして、従来公開してきた参照モデル「IVRA」を発展させた「IVRA-Next」を公開した。
データ連携によるトレーサビリティーの構造
先述したSMU間の価値の移動を表現するPLUは、フィジカル世界でもサイバー世界でも統一的なIDで管理できるが、それぞれで関連する業者や場所などは異なる。
フィジカル世界におけるPLUの移動は、物理的な制約や、各国、各地域の制度、そして各企業のビジネス的な制約により、荷積地から荷受地までの間に、いくつかの中継地が存在する場合が一般的である。こうした中継地も、ここでは SMUとして定義し、活動レイヤーにおいて役者、モノ、情報、そして活動といった基本要素とその関係が定義できる。
中継地を含め、PLUの移送に関係する全てのSMUは、その出荷と入荷を、各拠点のHCTによって管理し、その内容をトレーサビリティーを管理するハイパー連携サーバ(Hyper Connection Server:HCS)に都度送信する。HCTは、荷積地と荷受地では、サイバー側のコンテナも扱い、それらをセットでHCSへ送信するが、それ以外の中継地のSMUでは、サイバーコンテナ(PLU-C)とフィジカルコンテナ(PLU-P)は別ルートとなる。
複数のSMU間でモノや情報、そしてデータをやりとりする場合に、HCSが重要な役割を担う。従来のアーキテクチャでは、このような高いセキュリティと信頼性が要求されるHCSを実装するためには、莫大な情報システム投資が必要であった。一方で、ブロックチェーン技術を活用することで、こうした仕組みを比較的安価に実することが可能となる。こうした仕組みを利用することで、データの帰属証明、データの配達証明、データの利用証明など、データ流通におけるいくつかの課題に対処できる。
緩やかな標準による辞書管理
データ連携を実現するためには各プラットフォーム間での連携は欠かせない。各プラットフォームでは、その内部のコンポーネントの連携をより確実にし、新しいコンポーネントの追加を容易にするため個別の辞書を持つ。一方で、複数のプラットフォームが、相互にデータ連携する場合は、それぞれの辞書が異なるために、そのままではつながらない。そこで、両者を仲介するための共通辞書を中立的な立場の組織が作成する必要がある。共通辞書は、それぞれのプラットフォームがもつ個別辞書の共通部分を取り出した形となる。
個別辞書と共通辞書との関係は、変換MAPによって定義される。もし、辞書間で該当する用語がない場合には、暫定的な用語が割り振られ、最初の時点では、それらは人の判断で定義されることになる。しかし、こうした個別辞書を活用することで、個々の生産現場やそれをカバーする個々のプラットフォームの持ち味が生かされ、緩やかな標準として辞書そのものが成長することになる。
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