“冷やす”を「コト売り」に、パナソニックが冷凍機のサービス化で得たもの:製造業がサービス業となる日(2/2 ページ)
パナソニック産機システムズは、IoTを活用した冷凍機システムにより、サービス化への取り組みを進めている。「モノ」から「コト」へのビジネスモデル変革で、どういう効果があり、どういう難しさがあるのだろうか。
「冷やす」をサービスとして提供する
パナソニック産機システムズでは、これらの遠隔サービス基盤を生かし2017年4月から新たに「冷やす」をサービスとして提供する「エスクーボシーズ」を開始している。エスクーボシーズは、冷凍冷蔵設備の導入から省エネ運用、保守メンテナンスまでを月々のサービス利用料で一括で行うサービスである。初期投資コストと運用にかかわる業務負担を減らす効果を発揮する。
具体的には、店舗の設備の状況分析を行い、投資する店舗の選定を支援する他、IoTを活用した遠隔監視により、故障予知を行いながらメンテナンス効率を上げ、AIを活用して運転データを解析。遠隔制御することで店舗環境に合わせた省エネ運転を実施する。
さらに「エスクーボシーズ」を活用する価値として、店舗側への負担なく店舗チェーン全体の冷凍冷蔵設備機器の最適化を実現できる点があるという。例えば、なかなか機器の更新ができず旧モデルを使用している不採算店舗と、現モデルを使っている人気店舗があるとする。通常では、旧モデルを新モデルに置き換えるが、エスクーボシーズにより冷凍冷蔵設備の運用全てをパナソニック産機システムズに任せてしまっている場合、売上高の上がる人気店舗に最新モデルを導入し、その店舗で使用していた現行モデルを不採算店舗に回すことで、全店の機器世代交代を早期化し、不採算店舗でも老朽化しない設備運営などが可能になるとしている。
パナソニック産機システムズ 販売促進部 部長の阿久澤光明氏は「資産管理と業務運営の全てを任せてもらうことで、ユーザー側のビジネスにとっても最善の形で効率的な機器運用ができるようになる」と価値について述べている。
現状では採用店舗は10店舗程度だとしているが藤田氏は「現状ではリース契約のような感じで活用してもらっている。機器運用の最適化というのは、メーカー側だけでもユーザー側だけでもできない。それぞれが協力することでパートナーとして、ユーザー側の運用最適化を実現できるような形を考えている。まだ、模索しながら進めている面もあるが、今後もさらに機能強化を進めていく」と述べている。
今後は、さらにAIなどによる分析機能などを強化していく方針である。パナソニックでは2017年11月に米国のデータ解析企業ARIMO(アリモ)を買収しており、同社の技術を生かした分析機能などを加えて、省エネ自動化サービスや故障予知などを展開していく方針である。
藤田氏は「故障予知については現在機器から取得できる温度と各種圧力データを用いて、高精度に予測できるような仕組みができつつある。この故障予知によって、良質な食品環境を保持できるようにする他、エネルギーの統合制御をできるようにし、デマンドレスポンスやネガワット取引などに対応できるようにしていく」と述べている。
現状の課題としては商流やメーカー間によるサービスの分断があるという。藤田氏は「エスクーボシーズも現状では冷凍冷蔵機器のみで展開している。照明や空調も一元化できることが理想だが、現在は商流として建設設備と店舗設備で異なっており、なかなか一元的に展開できるような状況ではない。メーカー間の機器連携などと同様で、これらがサービスとしての価値向上を阻害する要因になっている。今後はこうした状況を解決するためにも何らかの取り組みを進めていきたい」と述べている。
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