IoTで品質向上を実現するためにはどういう考え方やツールが必要か:IoTによって製品品質を向上する(2)(2/2 ページ)
IoTの活用が広がりを見せていますが、上手に活用すれば製品品質の向上につなげることも可能です。本連載では、最新の事例を紹介しながら、IoTを使って製品の品質をどう向上させるかについて説明していきます。第2回となる今回は、品質向上をIoTを活用して実現する際に必要となるツールや考え方について解説します。
自工程完結に必要なツール類
自工程完結を実現するにも活用すべきツール類が存在します(図3)。製品開発の企画から始まって、開発・設計段階から顧客に届けるまでの各フェーズで、発生防止と、流出防止の各ツールを確実に活用していくことが求められます。
例えば、企画のフェーズでは「1. 大部屋活動」が重要になります。開発の初期段階から、試作や生産準備、工場、ロジスティクス、マーケティング、営業、サービスといった関連メンバーが参加して、最終製品のイメージを共有し、実現に向けた課題を解決していきます。この活動は、フロントローディングの一環としても捉えられています。開発の早いフェーズから各工程での課題解決に取り組むと設計段階から製品の完成度が上がり、総負荷が低減されるというものです。手戻りややり直しがなくなり、製品開発リードタイムを短くすることにつながります。各ツールの狙いと、大部屋活動の利点を図4にまとめています。
各企業では、これらのツールを活用したさまざまな取り組みが進められているはずです。しかし、どれか1つでも欠けると、思うような品質向上の効果が得られず、自工程完結を実現できません。大部屋活動を導入すると、ツールのレベル、欠けている部分などが明確になるので、品質をさらに高められるようになります。しかも、全ての個人の活動が会社の目標とひも付き、関係性が明白になるので、各自が責任を持って業務に取り組めるようになるという利点も生まれます。
大部屋活動は、各シフトの始まり、またはポイントになるデザインレビューなど、1時間半くらいでの運営が一般的です。もちろん緊急時の現状共有や朝の30分ミーティングなどにも使われます。図5では、PLMのダッシュボードを大きな液晶画面を使って共有するイメージです。「デジタル大部屋活動」なども最近では注目され、フルデジタルで実施することも可能ですが、日程や目標達成のシナリオ共有など、まだまだホワイトボードなどを使い、実際に顔を合わせた方が効率的な場合もあります。デジタルな部分とリアルな部分を組み合わせてハイブリッドで進めていくことが重要だといえるでしょう。
筆者紹介
田中孝史(たなか たかし)
KPMGコンサルティング
製造セクタ ディレクター
マネジメントコンサルタントとして、世界各地の製造業のコンサルテーションを実施した経験を有する。また、プロジェクトリーダーとして、製造業の企画・コンセプト、R&D、設計、生産技術、生産、ロジスティクス、販売・サービスと全てのライフサイクルを手掛ける。自動車、航空機、電気製品、衣服、医療機器など、対象とする産業も幅広い。
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