エンジンやボディー、シャシーはどう進化する? マツダSKYACTIV第2世代:乗って解説(4/4 ページ)
マツダが開発中の火花点火制御式圧縮着火エンジン「SKYACTIV-X」に試乗する機会を得た。試乗に先立って詳細な技術説明とともに次世代のボディー&シャシー技術についても明らかにされ、マツダが目指す方向性が見えてきた。
2種類の燃焼モードはシームレス
さて、いよいよ開発中の車両に試乗する時がやってきた。まだ世界に6台しか存在しないスカイアクティブ-X搭載車両に、である。
この開発車両の前に、比較対象として排気量2.0l(リットル)のスカイアクティブ-Gを搭載した現行アクセラで同じ試乗コースを走り、その感触を身体にインプットしておく。乗り換えたスカイアクティブ-Xは、Dレンジにシフトすると何事もなくスムーズに走り出した。
「これが圧縮着火の状態」といわれても、にわかには信じ難いほどスムーズで通常のガソリンエンジンと変わりない。実際にはアイドリング付近はSI(火花着火)で、それ以上はSPCCIによる運転となっているのだが、燃焼モードの切り替えによるトルクやエンジン音の変動などはなく、実にシームレスな制御を実現していた。
それでも走っていると、従来のスカイアクティブ-Gとは異なるフィールが見え隠れする。ストイキSPCCIとリーンSPCCIの切り替えは負荷で決まるのだが、現時点ではストイキからリーンに燃焼モードを切り替える際、EGRを大量に使っていることもあって、燃焼が不安定になり息継ぎすることがある。その逆にリーンSPCCIからストイキSPCCIへの移行はスムーズだ。
ただし、ストイキSPCCIの状態でも緩加速時にカリカリとノック音が聞こえてくることも。これは従来のガソリンエンジンでは放ってはおけない状態だが、SPCCIではむしろ理想的な燃焼状態ともいえるサインなのだとか。そう聞くと、メカ好きとしては悪い印象はないのだが、市販される時にはこうした異音はネガ要素として完全に解消することを目指すという。
4000rpmから上の回転数は再びストイキSIの運転モードになるが、その際も切り替えられたことが分かるような兆候などもなく、勢い良くエンジンは吹け上がる。
このエンジンの目玉はリーンSPCCIなので、なるべくリーンSPCCIに燃焼モードが入るように走ろうとしてみた。現時点では巡航や、とても緩やかな加速の状態でリーンSPCCIとなる。エンジンルームを大きくカバーで覆っていることもあって、この時の巡航はスムーズで静粛性も高い。
メーターパネルは市販のアクセラのものだが燃費計などはキャリブレーションが行われていないため不明だ。それでも、燃費だけで言えばEGRを大量に吸い込んでいる軽負荷のストイキSPCCIでもかなり燃料消費は抑えられているだろう。
もう1つの次世代ビークルアーキテクチャを採用したボディー&シャシーによる走りについても触れておきたい。
開発車両のリアサスペンションは従来のマルチリンクからTBA(トーションビーム)へと変更されていた。これはリンクの要素を減らすことでモデルベース開発による最適化をより容易にすることができるメリットがあり、ボディーの重量増を足回りの軽量化で打ち消すことができることも狙える。動きを徹底的に解析すれば、マルチリンクは不要という考えなのであろう。
試乗コースでのコーナリングではTBAとなったことでの弊害は特に感じられず、路面の突起や表面の荒れた舗装路は振動をうまく吸収してくれることは確認できた。だが時速20〜30kmで凸凹した路面を走り抜けると、ユサユサと揺すられる感触の中にタイヤの剛性不足によるグニャグニャとしたフィールが残る。時速60〜80kmでダブルレーンチェンジをした際にも、最後にタイヤがブルンッと揺れるような挙動が気になる。タイヤが原因でこのボディーのポテンシャルを伝え切れていないことに、もったいない印象を受けた。
個人的には従来のケーシング剛性を与えたタイヤでサスペンションを煮詰めていき、この次世代ボディーのポテンシャルをしっかりと感じたいと思った。2019年から市販化される次世代のマツダ車。ここからの熟成ぶりを楽しみに待ちたい。
筆者プロフィール
高根 英幸(たかね ひでゆき)
1965年生まれ。芝浦工業大学工学部機械工学科卒。輸入車専門誌の編集部を経て、現在はフリーランス。実際のメカいじりやレース参戦などによる経験からクルマや運転テクニックを語れる理系自動車ライター。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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