AIは仕事を奪うのか、熟練技術を受け継ぐ担い手になるのか:AI&IoTセミナーレポート(2/2 ページ)
菱洋エレクトロは、東京都内でAI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)をテーマにしたセミナー「RYOYO AI Realセミナー 〜AIがビジネスを変革する〜」を開催。注目を集めるAIやIoTに対してどのようなアプローチや活用方法があるのか、製品やサービスの開発にどのように適用すべきかについてさまざまな講演が行われた。
「分断のないAI活用」で実現する「自律協調分散型」社会
ウフル 専務執行役員の古城篤氏は「分断のないAI活用」について講演を行った。デバイスからクラウドへ、全てのモノがインターネットへつながるIoTが普及し始めているが、実際のところはデバイス間、クラウド間の連携がスムーズではない。そして、あるデバイスに関わるIoT関連の機能を個別にクラウド化していくとストレージや通信量が無限に増えていく――そんな新たな課題が立ち上がっている。
ウフルのオーケストレーションサービス「enebular」では、これらの課題を解決しようとしている。古城氏は「クラウドで良いところはクラウドで。エッジ側でいいならエッジ側で。enebularではデータフローの中で適材適所に配置を行うことでセキュリティを確保し、通信料やストレージも最小限に抑えることができる」と強調する。
さらに同社は「自律協調分散型」の社会を目指していくという。自律協調分散型とは、モノ同士がクラウドを介さなくてもエッジデバイスがデータを直接判断、通信することで素早いレスポンス、通信量の削減、高いセキュリティを実現することだという。「これからのIoT、AIの開発に際し、PDCAサイクルをより早く回していくことを追求した結果、enebularというプラットフォームに行き着いた。オーケストレーションと名付けたように、IoT、AIの環境において全体最適をいかに実現できるのか。今後もパートナー企業とのコラボレーションや実証実験を進めていく」(古城氏)としている。
最後に講演を行ったのは、セミナーを主催する菱洋エレクトロでIoT営業本部 営業企画部長 横山孝徳氏である。半導体ビジネスを中心とするエレクトロニクス商社として成長を遂げてきた同社だが、近年はHPEやインテル、マイクロソフト、NVIDIAなどの正規代理店という立ち位置を生かして、AIやIoT、ICT関連ビジネスを拡大しており、今後のさらなる成長を見据えている。
横山氏は、IoTやAIに関わる開発を行う上でのポイントとして「安全性」「連携性」「拡張性」の3つ挙げた。安全性はセキュリティをどのようにして担保するか、連携性はデバイス同士のつながりをいかに担保するか、拡張性はどれくらい適用範囲、機能、精度を拡張していけるかが課題になる。「これら3つのポイントは、開発側だけでなく、IoTやAIを活用する現場側でも検討すべきだ」(同氏)。
例えば、東急電鉄と実施した踏切事故防止を目指す実証実験や、ANAのビジネスチャットツール開発は、現場にある課題を出発点としてソリューションの提案、実行を果たした事例だという。横山氏は「『企業が持つ課題』と『活用する各社のデバイス・サービス』を俯瞰して見ることができる専門商社の立ち位置を最大限に生かし、モノの提供だけでなく、構築・設計・開発・実装・運用の各ステージを支援することで、エンドユーザーの利益に直結するビジネス開発に貢献したい」と講演を締めくくった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- オートデスク新CEO「AIやロボットは仕事を奪わない、より多くの仕事を生み出す」
オートデスクは、同社ユーザーイベント「Autodesk University Las Vegas 2017」を開催。初日の基調講演には、2017年6月に新たに社長兼CEOに就任したアンドリュー・アナグノスト氏が登壇し「AIによる自動化やロボット技術は、人間から仕事を奪うのではなく、より多くの仕事を生み出すだろう」と述べ、新技術の大きな可能性について説明した。 - ロボットの将来像は「背中を見て仕事を覚える」世界へ
2020年に開催される日本発のロボットチャレンジ「World Robot Summit」に向け、記念シンポジウムが都内で開催された。WRSの実行委員会諮問会議 委員であるカリフォルニア大学サンディエゴ校 コンピュータ理工学部 教授のヘンリック・クリステンセン氏が登壇し「ロボティクスの未来」をテーマに、自律型ロボットの将来像などについて解説した。 - 機械は人の仕事を奪わない、“人とロボットがともに働く現場”が拡大へ
2016年は人工知能関連技術が大きな注目を集めて「機械が人間の仕事を奪う」という議論が大いに盛り上がりを見せた。こうした一方で2017年には「現場」において、こうした動きと逆行するように見える「人とロボットが協力して働く世界」が始まりを迎える。 - 今後5年で人々の仕事や生活を変える5つのイノベーション
IBMは、人々の仕事や生活を今後5年間で変える可能性を持つ、5つのイノベーションをまとめた「IBM 5 in 5」を発表した。言葉から精神疾患の兆候を予測したり、自動車の運転時に未知の危険を知らせたりと、見えないものを可視化する科学的手段だ。 - AIに代替される仕事、されない仕事は
人材紹介会社集合サイト「ミドルの転職」が「AIに代替される仕事、されない仕事」についての調査結果を発表。AIに代替される業務が「あると思う」と76%が回答し、可能性のある職種として「一般事務」「経理」「コールセンター」が挙げられた。 - ロボットに仕事を奪われる時代、人間は教師になる
人間には人間の、ロボットにはロボットの良さがある。