ロボットの将来像は「背中を見て仕事を覚える」世界へ:協働ロボット(1/2 ページ)
2020年に開催される日本発のロボットチャレンジ「World Robot Summit」に向け、記念シンポジウムが都内で開催された。WRSの実行委員会諮問会議 委員であるカリフォルニア大学サンディエゴ校 コンピュータ理工学部 教授のヘンリック・クリステンセン氏が登壇し「ロボティクスの未来」をテーマに、自律型ロボットの将来像などについて解説した。
経済産業省とNEDOでは、ロボットの社会実装と研究開発を加速させることを目的として「World Robot Summit(WRS)」の開催を計画※)。2018年にプレ大会(東京)、2020年に本大会(愛知、福島)を予定する。
※)関連記事:2020年にロボットの国際大会を日本で開催、3分野6種目で実施
このWRSプレ大会を1年後に控えて、東京都内でWRSのメッセージである「Robotics for Happiness」をテーマに、シンポジウムが開催された。本稿では、この中で登壇した、World Robot Summit実行委員会諮問会議 委員で、カリフォルニア大学サンディエゴ校 コンピュータ理工学部 教授 状況適応型ロボット技術研究機構 ディレクターであるヘンリック・クリステンセン(Henrik Christensen)氏の講演「The future of robotics - challenges and opportunities」の内容をお伝えする。
1つのラインでiPhone 8とiPhone Xを作る
クリステンセン氏はロボット研究の第一人者であり、専門とする研究分野は、システムインテグレーション、ヒューマンロボットインタラクション、マッピング、ロボットビジョンなどに広がる。このうち人工知能(AI)、ロボット工学、ロボットビジョンに関する350以上の論文を発表している。アメリカ科学振興協会(AAAS)、米国電気電子学会(IEEE)フェローで、2014年にはオールボー大学(デンマーク)より名誉博士号を授与された実績などもある。講演では、今後のロボティクスの展開および課題などを紹介した。
現在、日本社会は高齢化が加速している。労働人口が不足する中いかに質の高い生活を維持できるのかが、将来に向けての大きな課題となっている。都市で生活する中で、渋滞や自然災害などの問題への対応も今後一層難しくなる。物流でも、分散化された物流システムが構築されない限り、特に集約された場所での宅配が難しくなる問題も起きつつある。今後はIoT(モノのインターネット)やAIにより、こうした問題が解決に向かうことが求められている。
こうした、IoTやロボットの活用に積極的なのが、製造業である。製造業では、現在スマートファクトリー化を推進しており、ロボット生産の領域を拡大する取り組みが広がっている。こうした自動化が広がることにより、コスト削減や生産スピード向上などの新たな価値を得られるためである。
例えば、スマートフォンを考えてみる。スマートフォンは現在12カ月に1回の買い替えをするユーザーが多いという。今後こうしたニーズがどのように動くかは分からないが、より多様化するニーズに対応していくためには、工場の生産体制も3製品を1つのラインで製造できるなど、より柔軟性が高く、効率的なものへと進化させていかなければならなくなる。「iPhone 8を作りながらiPhone Xも同じラインで生産設備を変更せずに作れるようにするようなことが必要になる。これができるのが未来型の製造ラインだ」とクリステンセン氏は述べる。
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