揺らぐ日本の信頼性、三菱マテリアルも子会社2社で検査不正:製造マネジメントニュース
三菱マテリアルは、連結子会社である三菱電線工業と三菱伸銅において、検査記録データの改ざんなど検査不正を行い、基準値に満たない製品を出荷していたことを公表した。
三菱マテリアルは2017年11月23日、連結子会社である三菱電線工業と三菱伸銅において、検査記録データの改ざんなど検査不正を行い、基準値に満たない製品を出荷していたことを公表した。
三菱電線工業については、シール材(漏れ止め用部品、パッキン)の寸法や材料物性の測定値を顧客企業の規格または社内使用の範囲内に書き換えるなどの改ざん行為を行ったという。担当の製造拠点は箕嶋製作所(和歌山県有田市)。2016年12月の三菱マテリアルによる品質監査で発覚し、2017年2月には不適切な行為であることが確認された。その後確認作業を進め2017年10月23日に不適合品の出荷を停止することを決定したという。
不適合品の出荷数は約2.7億個の見込みだが、不適合品を納入した顧客については「判明している」(三菱マテリアル)とし、現在個々の企業に説明を開始しているという。不適合品の出荷先企業は229社に及ぶとしており、製品の使用分野は航空・宇宙、産業機器、電力機器、自動車など多岐にわたる。
三菱伸銅については、車載端子に使用される黄銅条の硬さや引っ張り強度の測定値を書き換えるなどの不適切行為を行い、顧客企業の規定範囲内としていた。さらに一部の合金条や純銅条の導電率や表面粗さの測定値の改ざんなども行っていたという。担当製造部門は若松製作所(福島県会津若松市)。2017年10月に三菱伸銅の社内調査により判明し、同年10月18日に不適合品の出荷を停止した。
こちらも不適合品を納入した顧客については「判明している」(三菱マテリアル)としている。不適合品の出荷先企業は29社。不適合品の可能性のある出荷量は879トンだという。
三菱電線工業、三菱伸銅、それぞれの不正行為に関して、現時点では法令違反および安全性に疑問が生じるような事案は確認されていないとしている。
対応策としては、2017年10月30日付で対策本部を設置し、三菱マテリアルが主導的に両社の指導・監督を進めていく方針。さらに、他の品質問題の有無を確認すべく臨時調査も実施する。さらに2017年12月1日付で三菱マテリアルグループの品質管理を行う専門部署を部に昇格させ、機能と人員を拡充するという。今後は対策本部とこの紹介する専門部署を中心に、グループの品質管理と教育、内部監査などの体制の再構築を図るとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 品質保証の体制をIoTでカイゼンする
日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説していきます。第3回となる今回は、品質保証体制へのIoT活用のポイントについて紹介します。 - 神戸製鋼が検査証明書のデータを不正書き換え、仕様に満たない製品を出荷
神戸製鋼は、アルミ・銅事業部門と同部門傘下のグループ会社において、取引先から要求された製品仕様に適合しない一部製品を、検査証明書のデータを書き換えるなどして出荷していた。 - 2014年10月以降生産の日産車121万台がリコール、原因はルール軽視の姿勢
日産自動車は、完成検査に不備があり初回車検を迎えていない約121万台に再点検を実施すると発表した。リコールは今週中に国土交通省に届け出て、速やかに実施する。 - 「実地訓練で人材育成」が裏目に、スバルが25万台リコールへ
SUBARU(スバル)は国内工場の完成検査に関する社内調査の結果について発表した。群馬製作所の本工場と矢島工場の合計3ラインにおいて、本来の規定とは異なる状況で完成検査が行われていた。 - “傲慢な”フォルクスワーゲンは排ガス不正を機に開かれた企業になれるのか
2015年9月の発覚から2カ月。フォルクスワーゲンの排気ガス不正問題は収束する気配を見せていない。この問題について、第三者認証機関のDNV GLグループで法務担当ディレクターを務めるThor Winther氏が講演で言及。同氏は「傲慢な企業といわれたフォルクスワーゲンだが、今後は開かれた企業になる必要がある」と述べた。 - 三菱自の燃費不正、試験場所に“不都合な真実”はなかったのか
2016年4月20日に三菱自動車から燃費不正の問題が公表された。しかし、公表されている内容からは、腑に落ちない点が多々ある。今回はなぜこのような不正が起こったのか、その動機は何だったのか、あくまでも私見であるが、試験内容も含めて背景から探ってみたい。 - 開く世界基準との収益性の差、日系化学メーカーが未来を切り開くのに必要なこと
企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説する本連載。今回はグローバル競争が過熱する日系化学メーカーの現状と抱える問題点について解説する。