ソニー「aibo」復活の意義を考察する:ロボット開発、その深層(3/4 ページ)
新型の家庭向けロボット「aibo」を発表したソニー。同社社長兼CEOの平井一夫氏は「ユーザーに感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社で有り続けることが、ソニーのミッションであり、ソニーの存在意義だ」と高らかに宣言したが、筆者の大塚実氏はやや複雑な思いでこの発表会を見ていた。
ソニーが「aibo」から得られるものは
ではなぜ、ソニーはaiboやXperia Hello!を投入したのか。これについては、おそらくソニーの戦略を全体的に見ていく必要がある。
ソニーがロボット事業への再参入を表明したのは、2016年6月に開催された経営方針説明会でのことだ(関連記事:ソニーがロボット再参入、「愛情の対象になるロボット」で)。ここで、同社はこれまで得意としてきた映像・音響、センサー、メカトロニクスなどを、AIやロボティクスなどの新技術と組み合わせ、エレクトロニクスの場を広げていく方針を示した。
この新方針のもと、同社はAI・ロボティクスの分野において、さまざまな取り組みを実施してきた。AIスタートアップへの出資、ベンチャーキャピタルの設立、ディープラーニング向けライブラリ「Neural Network Libraries」のオープンソース化(関連記事:ソニーの深層学習はIoTデバイスの開発に最適、ノンプログラミング開発環境も提供)など、技術や人材への投資を加速させている。
ソニーが現在、特に重視しているのはおそらくAI技術だ。AI技術はロボットだけでなく、デジカメやスマートフォンなど、他の多くの製品に対しても適用可能で、それが他社との差別化になる。波及効果が非常に大きい。
ディープラーニング向けライブラリとしては、すでにグーグル(Google)の「TensorFlow」などが先行している。しかし、それに対抗する形で、ソニーが自社のNeural Network Librariesを公開したのは、コア技術と位置付けるAIの進化を、より加速したいという狙いがあるからだろう。
現代のソフトウェア開発は、自社だけの開発力ではとても世界のスピードに追い付けない。オープン化して、より多くの社外開発者を取り込むことが重要であり、それは後発であればなおさらのことだ。
aiboのブランド力はいまだに大きい。世界中の開発者に興味を持ってもらう手段としては有効だろうし、このように魅力的な製品を次々に投入することで、コミュニティーも活性化する。今回のaiboには、フラグシップモデルとして、そのような面での貢献も期待されているのではないだろうか。
ところで、aiboとXperia Hello!と同時期に、ソニーからは新たな移動体験を提供するというコンセプトカート「SC-1」が発表されている(関連記事:ソニーが“つながるクルマ”試作、センサー×ARディスプレイで窓を置き換え)。まだ試作開発の段階で、すぐに発売されるわけではないものの、窓の代わりにディスプレイを配置するなど、なかなか斬新で面白い。今後のソニーには、このようにユニークな製品を期待したいところだ。
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