ソニーが“つながるクルマ”試作、センサー×ARディスプレイで窓を置き換え:自動運転技術
ソニーは、新たな移動体験の提供を目的としたニューコンセプトカートを試作開発した。センサーとディスプレイで窓の代わりとし、ARなどでエンタテインメント空間を実現する。
ソニーは2017年10月24日、新たな移動体験の提供を目的としたニューコンセプトカート「SC-1」を試作開発したと発表した。
「SC-1」は乗員の操作による運転に加え、クラウドを介して遠隔からの操作で走行が可能である。車両の外形寸法は全長3140×全幅1310×全高1850mmで、乗車定員は3人。
「SC-1」の最大の特徴は運転窓の代わりにディスプレイを採用しているということだ。人の視覚能力を超えるイメージセンサーを車両前後左右に搭載し、360度全ての方向にフォーカスが合された映像情報を取得。この映像を内部に設置された49インチ 4K液晶モニターで表示することで、運転窓の代わりとする。
高感度の35mmフルサイズ「Exmor R」CMOSセンサー5台を搭載することで、夜間でもヘッドランプなしに視認が可能だという。併せて超音波センサーと2次元ライダー(LIDAR、レーザー画像検出と測距)を搭載しており、エッジコンピューティングにより安全な走行支援を行う。ネットワーク接続されたクラウド側には走行情報が蓄積され、ディープラーニングで解析することで、最適な運行アシストにつなげる。
「SC-1」は自社開発の融合現実感(Mixed Reality)技術を搭載し、モニターで見る周囲の環境を捉えた映像にさまざまなCGを重畳して表示できる。従来は自動車やカートで景色を見るだけであった車窓をエンタテインメント空間へと変えられる。
また車内に向けてだけでなく、車外に対しても窓の代わりに55インチ 4K液晶モニターを設置することで、さまざまな映像を車両の周囲にいる人に対し映し出すことができる。イメージセンサーでとらえた映像をAI(人工知能)で解析することで、周囲の人の性別や年齢、属性などを判断し、インタラクティブに発信する情報を変化させれられる。
「SC-1」は、2017年9月から沖縄科学技術大学院大学学園(OIST)のキャンパスで、実証実験を開始している。実証実験はOIST Integrated Open Systems Unit(北野ユニット)との共同研究で進めている。各種走行試験に加え太陽光など自然エネルギーの利用も含めた電力利用や、走行時の消費電力の低減、最適化の考察を行う。
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