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ソニー「aibo」復活の意義を考察するロボット開発、その深層(2/4 ページ)

新型の家庭向けロボット「aibo」を発表したソニー。同社社長兼CEOの平井一夫氏は「ユーザーに感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社で有り続けることが、ソニーのミッションであり、ソニーの存在意義だ」と高らかに宣言したが、筆者の大塚実氏はやや複雑な思いでこの発表会を見ていた。

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最も大きく進歩したのはAI

 そして先代AIBOが撤退してから、最も大きく進歩したのはAI(人工知能)技術といえるだろう。aiboには、3つのAIを搭載。まず本体側とクラウド側にそれぞれAIが用意されており、この2つの連携でaiboの“個性”が成長する。クラウド側にデータが保存されているため、将来aiboを買い換えたときも、個性を引き継げるという。

 これらパーソナルAIとは別に、共通AIも用意。各aiboのクラウドAIからデータを集め、これが集合知として蓄積されることで、aiboはさらに賢く進化することができる。

「aibo」は3つのAIの連係で進化していく
「aibo」は3つのAIの連係で進化していく(クリックで拡大)

 先代AIBOも感情モデルを持っており、オーナーとのコミュニケーションを通して個性を獲得するとされていたが、これはあくまで仕組みとして、事前に組み込まれていたものだ。実際に学習によって成長していくaiboとは本質的に異なる。

 またストアからアプリを選んで、新しい機能を追加していくことも可能だ。aiboの内部は、Linux+ROSで動作している。オープンなSDKを用意して、他社が開発したアプリでも動くようにするという。

 aiboは犬型という設定のため、人間と会話することはないが、音声認識機能は搭載しており、将来的にはIoT(モノのインターネット)連携も考えられている。この機能により、スマートスピーカーのように家電を制御するようなことも可能になるだろう。

IoT連携は、将来のアップデートで検討されている
IoT連携は、将来のアップデートで検討されている(クリックで拡大)

進化した「aibo」だが意外感はなし

 このように、aiboは撤退中に進化していた技術により、全く新しい製品に生まれ変わっているのだが、意外感は無い。AI、画像認識、SLAM、クラウド、IoT連携、ストア機能などは、全て既存の家庭向けロボットやスマートスピーカーなどで実現している。もちろん、後発ゆえにブラッシュアップされてはいるだろうが、真新しさは無い。

 これは、aiboの少し前に発表されたコミュニケーションロボット「Xperia Hello!」でも感じたことだ。このロボットには、コミュニケーション、見守り、インフォテインメントなどさまざまな機能が搭載されている。LINEやSkypeも利用可能だ。しかし、このロボットならではの特徴は、といわれると、ちょっと悩んでしまう。

コミュニケーションロボット「Xperia Hello!」の使用イメージ
コミュニケーションロボット「Xperia Hello!」の使用イメージ(クリックで拡大) 出典:ソニー

 両者とも、確かに製品としての完成度は高いだろうが、現時点で考えられる機能を全て盛り込んだだけという印象は拭えず、「ソニーの存在意義」をアピールするにはやや物足りないと感じる。

(ただ、ここで補足しておきたいが、aiboやXperia Hello!のように長期間利用することが前提の製品だと、スペックを並べてみただけでは、正確な評価は難しい。実際に長期間使ってみないと、飽きやすいのか、それとも楽しく使い続けられるのかは分からないからだ。製品として重要なのはむしろこの部分だと思うが、今はまだ試用すらできていないので、本稿でその部分の評価は避ける)

 表面的に見れば、Xperia Hello!は14万9880円、aiboは19万8000円(本体)+9万円(ベーシックプラン3年)と、決して安くはない(どちらも税別価格)。この価格でアーリーアダプター以外に売れるかというと、かなり難しいだろう。

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