世界トップ10入り目指すパナソニックの車載事業、開発体制は全社横断で:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
2021年度の売上高2兆5000億円、自動車部品メーカートップ10入りに挑戦するパナソニックの車載事業は、2017年4月から研究開発体制も変更した。旧AVCネットワークス社の技術者が合流し500人体制となったオートモーティブ開発本部により、自動車メーカーなどの顧客に対して、5年先の将来を見据えた先進的なアプローチを進めていく。
「自動運転EVコミューター」は2017年度内に公道へ
会見では、2022年ごろの導入を目指すADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術に関連するデモンストレーションを披露した。会見場となった佐江戸車両試験場は、オートモーティブ開発本部などが拠点を構えるパナソニックグループの佐江戸事業所内にある。今回のデモは、2016年6月に開設したばかりの車両試験場内のテストコースで行われた。
行ったデモは「自動運転EVコミューター」「後方緊急自動ブレーキシステム」「自動駐車システム」の3つだ。
自動運転EVコミューターは、「自動車メーカーの立場に立って使いやすいソリューションを作るため」(水山氏)に開発したコミューター型EV(電気自動車)だ。外形寸法は全長2.5×全幅1.3×全高1.4mで、車両重量は566kg。48Vのリチウムイオン電池パックと、充電器、12Vシステム向けに降圧するDC-DCコンバーター、インバーター含めた電動システムを搭載している。これらは全て自社開発だ。
センサーは、前方を検知するステレオカメラ、車両の全周を見る全周囲カメラ、屋根部に設置されたライダー、GPSの他、ミリ波レーダーなども搭載している。現時点で、パナソニックが開発に注力しているセンサーは、カメラとソナー(超音波センサー)だが、それ以外のセンサーも搭載しているのは「自動車メーカーにとってどのようなソリューションが必要なのかを理解するには、自社で開発していないセンサーも実際に使ってみなければ分からないことも多い。また、当社のカメラやソナーと、他のセンサーとの間で連動が必要になることもあるからだ」(パナソニック AIS社 オートモーティブ開発本部 映像・センシング技術開発センター 所長の後藤昌一氏)という。
デモでは、自動運転EVコミューターが、障害物回避走行、飛び出し歩行者の検出・停止・走行再開、旋回コースの走行、赤信号での停止から青信号での発信などを自動で行う様子を見せた。水山氏は「2017年度内の公道走行を目指している」と述べる。
「後方緊急自動ブレーキシステム」では、新たに開発したソナー(超音波センサー)の性能について、従来品との比較を示して見せた。新開発ソナーは、出力する音波の変調によって音色付けと検知距離の増大を図っている。音色付けでは、他のソナーとの混信が避けられる。検知距離については、従来品が直径6cmのボールを約2mまで検知できるところを、開発品は5m以上でも検知できるという。
直径6cmのポールに向かって車両が後退するとき、ポールを検知して自動停止する動作について、従来品は時速6kmまでしか対応できないのに対し、開発品は時速15kmでもきちんと停止することができた。センサーモジュールのサイズも、従来品と開発品は同等である。
「自動駐車システム」では、車両の全周囲を検知するカメラ4個と、車両の前方と後方を検知する短距離ソナー8個、車両側方を検知する長距離ソナー4個を組み合わせたセンサーフュージョンにより、ステアリングとブレーキを自動制御しさまざまなスペースに自動駐車する様子を見せた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 車載Linuxのオープンソース活動は携帯電話機の轍を踏んではならない
「Automotive Linux Summit 2014」の2日目の基調講演には、パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社のインフォテインメント事業部で技術担当(CTO)を務める水山正重氏が登壇。水山氏が、「オープンソース活動では、議論だけに時間を費やすべきではない。開発成果を実装する必要がある」と語る背景には、携帯電話機の開発を担当していた際の経験があった。 - パナソニックの車載事業が世界トップ10入りへ、2021年度に売上高2.5兆円
パナソニックのオートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社は、車載事業の売上高が2018年度に2兆円を達成することがほぼ確実な状況にある。2021年度には売上高2兆5000億円を達成し、自動車部品メーカートップ10入りに挑戦するという。 - いよいよ収穫期へ、パナソニックが車載機器売上高2兆円に手応え
パナソニックは2017年度の経営戦略を発表。テスラなどをはじめとする車載向け電池やインフォテインメント機器群が好調を維持しており、2018年度に2兆円としていた車載向けの売上目標が達成可能であるとの見通しを示した。 - パナソニックの電子ルームミラー、トヨタがミニバンなど向け純正用品で採用
パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社は、後方の車載カメラの映像を表示できるルームミラー「電子インナーミラー」の量産を開始した。 - パナソニックが売上高数百億円の事業部を複数創出へ「IoT時代は最大のチャンス」
パナソニックがイノベーション推進に向けたグループの研究開発戦略について説明。「IoTの時代を最大のチャンスと捉えて、新しい事業を作り出していく」(同社 代表取締役専務の宮部義幸氏)として、新設のビジネスイノベーション本部の活動により、現行37事業部と同等レベルに成長し得る事業を、数年内で複数創出していく方針を示した。 - パナソニックが目指すAIの“使いこなし”とは
パナソニックがAI(人工知能)の活用に注力する姿勢を鮮明にしている。2017年4月に新設したビジネスイノベーション本部傘下のAIソリューションセンターは、AIの“使いこなし”を進めて、従来にない新たな事業の立ち上げも担当していく方針だ。同センター 戦略企画部 部長の井上昭彦氏に話を聞いた。