パナソニックの車載事業が世界トップ10入りへ、2021年度に売上高2.5兆円:製造マネジメントニュース
パナソニックのオートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社は、車載事業の売上高が2018年度に2兆円を達成することがほぼ確実な状況にある。2021年度には売上高2兆5000億円を達成し、自動車部品メーカートップ10入りに挑戦するという。
パナソニックは2017年5月30日、4つのカンパニーの事業方針を投資家向けに説明する「Panasonic IR Day 2017」を開催した。オートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社は、同カンパニーが扱う車載事業の売上高が2018年度に2兆円を達成することがほぼ確実で、2021年度には売上高2兆5000億円を達成し自動車部品メーカートップ10入りに挑戦するという。
AIS社の車載事業は、2016年度の売上高が約1兆3000億円だった。その内訳は、カーナビゲーションシステムなどの快適分野が5400億円、カメラやソナーなどのセンサーやセンサーを用いたADAS(先進運転支援システム)などの安全分野が3700億円、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などのxEV向け電池を核とする環境分野が4000億円だった。
AIS社によれば、快適、安全、環境の3分野に関わる車載電子機器市場の規模は2016年度が19.3兆円。そして2018年度には21.9兆円まで増えるという。年平均成長率は7%になる。AIS社の車載事業は、この業界平均を大幅に上回る年平均24%の成長を想定しており、2018年度の目標である売上高2兆円を達成する見込みだ。「2018年度の売上高目標の受注率は93%に達しており、2兆円はほぼ手の内に入っている」(パナソニック AIS社 上席副社長 オートモーティブ事業担当の柴田雅久氏)という。
2兆円の内訳は、快適分野が6300億円、安全分野が6200億円、環境分野が7500億円となっている。特に、安全分野は2年間で67%増、環境分野は同87%増となっており期待は大きい。
安全分野では、画像処理技術を中核とするADAS事業が成長をけん引する。現時点ではカメラやソナーといったセンサーを販売するティア2サプライヤーとして売り上げが中心だが、2018年度からは電子ミラー用カメラシステムや全周囲カメラシステムといったティア1サプライヤーとしての売り上げが増加する。さらに2020年度以降は、自動駐車システム、自動運転システムといった、より複雑なシステムを納入していくという。
また2017年3月に連結子会社化したスペインのフィコサ(Ficosa International)も安全分野では重要な役割を果たす。電子ミラーについてはフィコサの技術や顧客層が中核となっており、両社のシナジーによって生み出す協業事業で売り上げの成長を想定しているからだ。
安全分野では柴田氏から注目の発言があった。「ADAS関連のデバイスの自社開発を進めており、他社製のデバイスを置き換えていきたいと考えている。2021年度にカメラを置き換え、そこから領域を広げていく。開発中の次世代半導体は、インフォテインメント×ADAS×フィコサの電子ミラーと通信モジュールといった掛け算で相乗効果を出せるようなものを検討している。そうでなければ、サムスン電子とハーマン(Harman)の連合には勝てない」(柴田氏)という。
環境分野の成長をけん引するのは、テスラ(Tesla Motors)などに供給しているxEV向け車載リチウムイオン電池だ。テスラ向けの円筒型電池は、2017年7〜9月期から「モデル3」の顧客への納入が始まるため需要が増える見込みで、米国ネバダ州の「ギガファクトリー」の能力増強を進めて対応する。一方、旧三洋電機の技術をベースとする角型電池は、国内の洲本工場のライン増設や、中国の大連工場の量産開始などによってxEVの需要増に対応していく。「2016年度末時点で採用モデル数は88まで増加した」(パナソニック代表取締役副社長兼AIS社社長の伊藤好生氏)としている。
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