PCだけでなく「アイデア具現化企業」になるVAIO、フェーズは“筋トレ”に:製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)
2014年7月にソニーから独立したPCメーカーの「VAIO」。4期目を迎える同社は「フェーズチェンジ」を掲げて、新たに3本目の柱として「ソリューション事業」を打ち出している。2017年6月に新たに就任したVAIO 代表取締役社長 吉田秀俊氏に話を聞いた。
3本目の矢は「アイデアをカタチにする」事業
MONOist ソリューション事業としてはまず「VR」とされていますが、どういう位置付けで取り組んでいくのでしょうか。
吉田氏 ソリューション事業そのものは新たなアイデアを実現する受け皿として用意したもので、現状では1つの分野にこだわっているわけではない。PC事業の資産と、EMS事業で培ったノウハウを生かし、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを組み合わせたソリューションを生み出していくという大きな枠を作った。
ある意味で、PCの法人向け事業も、基本的にはカスタマイズが入るのでソリューションだといえる。また、EMS事業も顧客の要望に応じて、設計や生産を行うので、ソリューションだといえる。基本的には「現在VAIOでやっていることを、他の領域でも展開できるのでは」という発想で取り組むものだ。
アイデアがたくさん生まれる中で、最も実現に近いということで紹介したのが「VR(仮想現実)」ということになる。VRソリューションでは、VRシステムを展開するABALと提携。VAIOのハードウェア開発力とABALのVRに関する開発、制作、運営力を組み合わせて、VRに関するハードシステムの導入から保守、コンテンツ制作、運営企画までを一貫して提供していく。VRについては、ソリューション事業で取り扱うためにさまざまな体験をしたが、確実に新しいユーザー体験の一部となっていき、B2CにもB2Bにも広がっていくと見ている。
VRといっても、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)やVR用グラスなどのハードウェア領域だけで勝負するという発想はない。現状ではVAIOのリソースで変化の激しいこの領域に取り組んでも難しいと考えており、VRソリューションでも他社のインタフェースデバイスを活用するつもりだ。自社のコアコンピタンス以外の領域は積極的にパートナーシップを活用し、足りないリソースをカバーしていくつもりだ。
MONOist ソリューション事業を展開するにおいて、外せないVAIOとしてのコアコンピタンスはどこにあると考えますか。
吉田氏 モノづくりを最初から理解しており「アイデアをカタチにする」ということを現実的に実現できるというところが、特徴だと考えている。現実的にモノが関連する領域で、信頼性も含めて、設計・製造し、運営や保守、メンテナンスまでカバーできる企業というのはそれほど多くない。VAIOとしてもアイデアを発信していくが、パートナー企業のアイデアを実際にカタチにする支援を行う企業としての力を持っているということが特徴だ。
こうした強みを生かせる領域であれば、VR以外にもさまざまなソリューションに取り組んでいくつもりだ。当面はまずVRソリューションの実現に集中し、段階的に案件をカタチにしていくが、その他のアイデアについても順次模索していく。
フェーズ3での「高い山」を目指す
MONOist 今後の抱負を教えてください。
吉田氏 既に、法人向けPC事業とロボットを中心としたEMS事業で経営の基盤はできたと考えている。フェーズ2では、さらに体制を“筋肉質”とし、現在までにさまざまな仕掛けを進めてきたところを取り込み、中期的にさらに“高い山”に登ることができるような装備を整えていく。新たなVAIOブランドの礎になるような強さを作り出していきたい。
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