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PCだけでなく「アイデア具現化企業」になるVAIO、フェーズは“筋トレ”に製造マネジメント インタビュー(2/3 ページ)

2014年7月にソニーから独立したPCメーカーの「VAIO」。4期目を迎える同社は「フェーズチェンジ」を掲げて、新たに3本目の柱として「ソリューション事業」を打ち出している。2017年6月に新たに就任したVAIO 代表取締役社長 吉田秀俊氏に話を聞いた。

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「VAIO」のブランド価値で事業をけん引する

MONOist 経営方針発表では「VAIOのブランド価値を高めたい」と述べていましたが、現状の企業規模や事業規模に対し「VAIOブランド」はむしろ非常に高いと感じます。どういう施策を考えていますか。

※)関連記事:第3の矢を放つVAIO、新事業の勝算はVRだけではない

吉田氏 経営方針では「ブランド価値を高めたい」と訴えたが、VAIOにとってブランド価値を高めるということは企業価値を高めるということに直結する。企業価値を高めるためには、ブランド力だけでなく収益力や製品開発力、人材などさまざまな要素を高めていく必要がある。こうした企業としての力が上がれば、企業としての信頼につながり、ブランド力を高めることにつながる。こうしたサイクルをうまく回して総合的に高めていくということが重要だと考えている。

 確かに現状では、VAIOの企業規模に対し「VAIOブランド」の浸透度は分不相応なくらい高いものだと思う。ただ、これはVAIOの持つ最大の資産だ。これを生かしていかに「実」となる事業を伸ばしていけるかが重要である。EMS事業などでも開始するとすぐに幾つかの企業から話をいただくことができた。これは安曇野で培った技術力はもちろんだが、まさに「VAIOブランド」あってこそのものだと思う。ブランド価値が企業価値に一致するように、大事に伸ばしていきたい。

「痩せすぎ」の状態をいかに筋肉質とするか

MONOist 現状での課題をどう感じていますか。

吉田氏 基本的には「リソース」が全てにおいて課題だと考えている。VAIOのここまでの3年間は、少ないリソースでやりくりをどうするかということに集中してきた状況だった。それはそれでうまく最適化が進んだが、新たな成長を考えた場合、少し「痩せすぎ」の状況だ。

 経営方針発表でも「筋肉質にしたい」という話をしたが、これは「さらにぜい肉をそぎ落とす」という意味ではなく、「新たな成長の土台となる筋肉をつける」という意味だ。つまり、必要なところに最適なリソースを強化し、成長に向け均整の取れた肉体を目指していく。また、それでも足りない領域については積極的にパートナーシップなどで外部の力を活用していく。

 今のままでは次の3年後や5年後を見据えた場合、新たな成長につなげることは難しく、同じような規模で同じようなビジネスばかりになってしまう。もちろん、現状のビジネスはしばらく成長できる基盤ができつつあるが、それだけでは中期的な経営の安定性や、次の規模への成長はできない。その土台をしっかり作っていくのが、私の役割の1つだと考えている。

MONOist リソース強化と関連して、主力事業の強化のポイントを教えてください。

吉田氏 PC事業については、先述したように国内の法人向け市場が基盤であるという現状は変わらない。ただ、一定レベルのボリュームを取ることが数のメリットを生み出すことにもつながるので、海外市場もうまくパートナーシップを活用しながら取り組んでいく。北米や南米など5カ国で海外展開している他、2017年8月には中国での販売も再開した。ただ、あくまでも当面は国内の法人向けが中心であるというスタンスは変わらない。

 よく「縮小する国内PC市場を主力にして大丈夫なのか」と聞かれるが、VAIOにとっては法人向けに本格参入したのは短い期間で販売量もまだまだ少ない。国内法人向けPC市場はある一定規模で残り続ける見込みであることを考えれば、今後数年間は伸ばし続けることができると考えている。

 生産リソースの余力についても、外部のEMSなどの生産リソースを活用し、最終的な検査や仕上げを安曇野で行い、生産の質感や品質を確保する「安曇野フィニッシュ」を実現する体制が確保できている。現状はフラグシップモデルの「Zシリーズ」は全て安曇野で生産しているが、標準モデルの「Sシリーズ」については、設計と品質検査はVAIOで行い、生産は海外パートナーに委託している。品質検査は全数検査を行っているが、さらに自動化などを推進し品質や生産性向上などに取り組んでいくつもりだ。

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VAIOのフラグシップモデルの「VAIO Zシリーズ」

吉田氏 EMS事業についても、現在非常に多くの声をかけてもらっているので、リソースの制限があるものの、効率的に受注できるように広げていく。ロボットに関するEMSニーズは多いが、EMS事業はパートナー企業ごとに、設計だけ受注する場合や設計から生産まで一貫して受注する場合、品質検査だけ請け負う場合など、企業によってさまざまなパターンが存在する。そのため一律にリソース強化を行うというのも難しい状況だが、変化の激しいPC事業に対し、安定的な収益性が見込めるEMS事業は、経営の安定化にも重要な事業であり、リソース状況を見ながら成長につなげていく。

 PC事業に一定のめどが立ち、EMS事業についてもある程度は軌道に乗ったという状況で、さらに将来に向けた新たな仕込みとして取り組むのが「ソリューション事業」である。

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