デジタル化で日独連携を、NRW州とデュッセルドルフ市が呼びかけ:製造マネジメントニュース
ドイツのNRW州と州都であるデュッセルドルフ市は、インダストリー4.0などを含むデジタル化の動きに対し、日本企業との連携を呼びかけた。
ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州と州都であるデュッセルドルフ市は2017年9月13日、記者懇談会を開催しデジタル化における連携の重要性を強調し、日本企業への連携を呼びかけた。
約600社の日本企業が進出
NRW州はドイツ全体のGDPのうち22%を占めるなど、経済的に重要な地域だ。さらに日本企業も州都デュッセルドルフを中心に約600社が進出するなど、日本企業との経済的な結び付きが非常に大きな地域である。また2016年には新たに413件の海外企業の進出があったが、そのうち31件は日本企業だったとしている。
デュッセルドルフ市の市長であるトーマス・ガイゼル(Thomas Geisel)氏は「日本企業とデュッセルドルフ市の関係は60年にもおよび、欧州で最も日本企業の進出が多い地域だといえる。インダストリー4.0や企業のデジタル化の動きが本格的に拡大する中、さらに連携を強化していくべきだ。その支援は進めていく」と述べる。
デジタル関連企業やスタートアップを呼び込む取り組みは、現在世界中の自治体が行っており、オープンイノベーション拠点の設立など、支援競争が過熱している状況だが、デュッセルドルフ市が日本企業の進出に対する優位性があるポイントとして、NRW州 経済・イノベーション・デジタル化・エネルギー省 国際経済局局長のヘルベルト・ヤコビー(Herbert Jakoby)氏は「日本企業との関係性が深いということ以外に4つのポイントがある」と述べる。
優位点の1つ目は技術や教育関係の環境が優れている点、2つ目が企業を呼び込むエコシステムができている点、3つ目がベンチャーキャピタルなど財政的な支援体制が整備されている点、そして4つ目が既存産業の大手企業が立地しており、連携による新たなビジネス創出ができる点だという。
ヤコビー氏は「特に4つ目の既存産業で強い大手企業が数多く立地している点はデュッセルドルフがユニークな点であるといえる。こうした企業がオープンなマインドを持ち、異分野の企業やスタートアップなどと交流し、デジタルイノベーションに取り組もうとしている。新たな連携などを実現できる。同じドイツ内ではベルリンなどがライバルになるが、ベルリンには既存産業の大手企業はなく、こうした連携はできない」と利点について述べている。
デュッセルドルフ市には流通大手のメトログループやエネルギー大手のイーオン、家庭用消費財大手のヘンケルなどの本社が立地しており、これらの企業がオープンイノベーション拠点などにも参加している。さらにデュッセルドルフ市では「メディアハーバー」とするインキュベーション拠点なども設立しており、ベンチャー企業の呼び込みなども強化しているという。
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