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ガラス繊維強化樹脂の板ばねが年産35万個、「繊維強化複合材は大量生産できる」材料技術(2/2 ページ)

ヘンケルジャパンは、自動車向けに繊維強化複合材と接着剤の技術サポートを行う拠点「コンポジットラボ」を横浜市磯子区に開設した。バッテリーの重量を相殺するために特に軽量化が求められる電気自動車を中心に繊維強化複合材の需要が拡大し、用途は車体骨格から足回りまで広がると見込む。

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素材メーカーが材料ではなく製造コストを下げる

ヘンケルジャパンの古永博之氏
ヘンケルジャパンの古永博之氏

 ヘンケルジャパン トランスポート&メタル事業本部 技術サービスグループマネジャーの古永博之氏は「大量生産モデルでの繊維強化複合材の採用は、自動車メーカーだけでは達成できない。ティア1、ティア2のサプライヤーを巻き込んだパートナーシップが不可欠だ」と話す。

 「炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のコスト構造を例に考えると、われわれが低コストな素材を提供するだけでは自動車部品の樹脂化は進まない。CFRPのコストで繊維以外の材料が占めるのは10%で、炭素繊維が40%となっている。残りの50%は製造や組み立て、表面処理のコストだ。ヘンケルでは部品の生産コストを下げるための製品開発を行っている」(古永氏)

写真左がバインダー、右の2つはマトリックス樹脂。2種類を混合して金型に射出する
写真左がバインダー、右の2つはマトリックス樹脂。2種類を混合して金型に射出する(クリックして拡大)

 素材メーカーとして強みとするのは、「繊維材以外に生産プロセスで使われる全ての化学品を提供できること」(古永氏)だという。

 プリフォームを作る際に重ねた繊維材同士を仮接着するためのバインダー、金型から部品を外しやすくするための離型材は「マトリックス樹脂と相性の良いものを開発した」(古永氏)。離型材は金型に塗布するだけでなく、マトリックス樹脂にも混合させる。

 また、樹脂以外の部品と接合するための接着剤は、異種材の熱膨張率の差を吸収できる伸び率と接着強度を両立した製品を用意している。また、組み立てや塗装の工程も考慮し、骨格には塗装時の熱で、工程の後半で組み付けるバックドアや外板には室温で硬化する接着剤を提供する。

ルーフの骨格と外板を接着した例(左、中央)。このCFRP製のルーフは、型から外した直後に塗装したもの。表面加工の手間を省くのもコスト削減(右)(クリックして拡大)

 ヘンケルのコンポジットラボは、大量生産に向く高圧樹脂トランスファー成型を取り扱う。コンポジットラボに導入した設備を用いた加工実演ではトータルの成型時間は2分程度だった。プリフォームをセットして金型を閉じた後、2種類のマトリックス樹脂を混合して射出。金型の中を真空にして繊維材に樹脂を浸透しやすくする。金型は110℃に熱される。

加工前のプリフォーム。試作なので平板な形状(左)。金型を開けた直後。今回は上面の金型に付く状態で離型したが、生産工程に合わせて離型の状態はコントロールできる(中央)。金型を閉じてから開けるまでは2分程度(右)(クリックして拡大)
物性試験のサンプル。層間せん断試験(左)引っ張り試験(中央)3点曲げ試験(右)(クリックして拡大)

 化学品を供給するだけでなく、材料の選定やさまざまな特性試験、シミュレーションによる設計分析、試作まで対応する。「新しい材料を使うということは、設計や生産が一から変わってしまう。そのために材料について知ってもらうのがコンポジットラボの役割。繊維強化複合材という新しい市場がゆっくり立ち上がるのは仕方のないことだ。時間をかけて信頼を勝ち取っていきたい」(カーステン氏)。

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