AIで革新進む製造現場、NECが描くプロセスとプロダクトの進化:DMS2017(2/2 ページ)
NECは「第28回 設計・製造ソリューション展(DMS2017)」に出展。製品軸とプロセス軸の2つの方向性でIoTやAIを活用した新たな製造業の姿を訴えた。
AIで検査工程を省力化
プロセス軸では、検査工程をAIで省力化する目視検査ソリューション「AI Visual Inspection」をアピールした。「AI Visual Inspection」は、「RAPID機械学習技術」を活用して、対象の製品画像をもとに、正確で高速な画像検査を実現するというものだ。
同ソリューションは、まず製造現場の検査工程にある製品を撮影し、撮影した画像データをNECのIoT基盤で構築したクラウド内に保存。この画像データを用いてクラウド側のAIが、製品の良品および不良品の特徴量を自動的に抽出、分析(学習)し、この結果から良品と不良品を判定するモデルを作成する。このモデルを現場の端末に配信し、モデルに基いて製品の良品と不良品の判定を1個数秒程度で行うというものである。
製造現場における検査工程は人の力によるものがまだまだ多く、将来的な全工程トレーサビリティー時代を見据えた場合、検査の自動化領域拡大へのニーズは高い。ただ、今回の「AI Visual Inspection」については「完全に自動化するという使い方ではなく、見るべきポイントを示し、人の判断を助けるというような使い方を想定している」(ブース担当者)。
その他、「AI Visual Inspection」と同様に「RAPID機械学習技術」を使ったAIソリューションとして、AIを仕分けに活用した画像検査ソリューションなども参考出展している。会場では、ネジとクギの仕分けを学習して、見極めるというデモを行っていた。「仕分けや検査などでも簡単に活用可能で、中堅中小製造業などにも提案を進めていきたい」(ブース担当者)。
物体指紋認証も進化
一方、NECの独自技術である「物体指紋認証技術」の活用も進化させている。DMS2016ではプリント基板の側面の「物体指紋」を認識するデモを行っていた※)が、今回は物体指紋認証技術により個体認識できる意義をあらためて強調したデモを行った。
※)関連記事:NECが福島で実証中の「物体指紋認証」とは、プリント基板を横から見ると……
具体的には、ある工場で加工された金属部品を別工場に運び、リングをはめる組み立て工程を行うという流れを想定。金属部品は温度や加工環境などで変化しやすく、公差の範囲内では全ての部品が良品として出荷される。しかし、他の金属部品と組み合わせる際に、公差の範囲内でもそれぞれの組み合わせによっては、うまくはまらないケースなども出てくる。これを、金属部品の物体指紋を認識し個体を識別することで、最適な組み合わせを判別でき、品質向上や歩留まり向上に貢献するという仕組みである。「物体指紋の活用も単純な個体管理だけでなく、品質向上や歩留まり向上などにもつなげられる実践的な提案に広げることができている」とブース担当者は述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- なぜNECは「製造業×IoT」に全力を振り切れたのか
IoTがもたらす革新は、製造業にどういう影響をもたらすのだろうか。ITベンダーでありながら製造業としての立場を持つNECはその強みを生かして早くから製造業のIoT活用を支援する「NEC Industrial IoT」を推進してきた。同活動を推進するNEC 執行役員 松下裕氏に話を聞いた。 - 「見える化」だけでは無価値、製造業IoTが価値を生む3つのポイント
NECのユーザーイベント「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2016」では、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)によるモノづくり革新を実現する「NEC Industrial IoT」の進捗状況を紹介。自社実践例も含めてIoTで真に価値を生む3つのポイントについて紹介した。 - 芽吹くか「組み込みAI」
第3次ブームを迎えたAI(人工知能)。製造業にとっても重要な要素技術になっていくことは確実だ。2017年からは、このAIを製品にいかにして組み込むかが大きな課題になりそうだ。 - 世界を変えるAI技術「ディープラーニング」が製造業にもたらすインパクト
人工知能やディープラーニングといった言葉が注目を集めていますが、それはITの世界だけにとどまるものではなく、製造業においても導入・検討されています。製造業にとって人工知能やディープラーニングがどのようなインパクトをもたらすか、解説します。 - きっかけは「スマホショック」、パナソニックがIoTに舵を切る理由
IoTがもたらす革新は、製造業にどういう影響をもたらしているのだろうか。大手電機のパナソニックでは、自社内や自社外でIoTを活用した業務プロセスやビジネスモデルの変革に積極的に取り組んでいる。危機感の裏付けになっているのが「スマホショック」だ。同社のIoT戦略を取り仕切るパナソニック 全社CTO室 技術戦略部 ソフトウェア戦略担当 理事 梶本一夫氏に話を聞いた。 - 人工知能は製造現場でどう役に立つのか
人間の知的活動を代替するといわれる人工知能が大きな注目を集めている。ただ、製造現場で「使える」人工知能は、一般的に言われているような大規模演算が必要なものではない。「使える人工知能」に向けていち早く実現へと踏み出しているファナックとPFNの取り組みを紹介する。