モノを作らないモノづくりが進化、設計変更に柔軟対応:製造ITニュース
富士通は、デジタル生産準備ツール「VPS」の新バージョンを発表。設計変更などモノづくりの柔軟性に対応する機能を強化し、2020年度までに約50億円の売上高を目指す。
富士通は2017年5月30日、デジタルプロセスが開発したデジタル生産準備ツール「VPS」の新バージョンを発表。従来の組み立て工程検討時に使用するだけでなく、設計変更や現場改善により変化する工程情報をタイムリーに更新できる機能を強化し、モノづくり工程の柔軟性への対応できるようにした。
「VPS」は、CADで作成した製品の3次元モデルデータを活用し、生産準備に必要な作業を仮想空間で行う生産準備ツールである。製品組み立て時の工程検討や製品ラインのレイアウト検討、製造用ドキュメント作成、生産設備の制御ソフトウェア検証などが行える。VPSファミリーの累計導入企業数は665社に及ぶという。
モノづくりの柔軟性への対応力を強化
新バージョンについて、デジタルプロセス 執行役員の山田洋一氏は「組み立て生産ラインの構築をフロントローディング化する意味ではVPSは高い評価を得ることができている。しかし、現状ではライン構築時には活用するが、設計の変更や現場の改善活動による生産ライン変更などにより徐々に変化する現場情報と仮想空間の情報が一致しなくなり、使われなくなるケースが多かった。こうした変化する現場に追随し改善活動の一環でもシミュレーションが利用できるようにしていきたい。今回はその前段階としてまず設計面での変更に柔軟に対応できるようにしたことが特徴だ」と述べている。
具体的には、現場の工程と一体化させていく取り組みとして、「組み立て動画の作成能力強化」「設計変更への対応力強化」「工程表現力の向上」「製造指示ビュワー」などを行った。設計変更の対応では、従来は設計変更時に操作動画などを全て作り直す必要があったが、追加部品や削除部品、変更部品を色分け表示し、差分形状だけでデジタルデータの変更が可能となった。その他、作業指示書など生産で使われる技術文書に利用する動画や静止画を作成するために、分かりやすい視点に自動的に切り替える機能や、工程情報を注記として一括自動挿入する機能を追加している。
製品構成や組み立て手順がほぼ確立している大型車両などの製品では、CADデータをベースとするよりも部品一覧や構成などを示したBOM(Bill of materials)情報をベースとした方が、組み立て工程の構築が容易である場合がある。新バージョンでは、BOM-CAD割当て機能を追加し、BOMシステムで管理される部品や構成情報とCADの形状情報を組み合わせ、組み立て工程情報を作成できるようにしている。
さらに、VPSで作成した組み立て手順の動画や工程フロー情報などの組み立て工程情報を生産現場で閲覧するための「製造指示ビュワー」を提供。ディスプレイ上の動画によって分かりやすく作業指示を行うことで、作業者のスキルに依存することなく、効率的かつ正確に組み立て作業を行える。この製造指示ビュワーのページ送りの時間を記録することで、組み立て作業の進捗度などを把握することが可能となり、製造現場のIoT活用などで期待される、製造現場の見える化などにもつなげられるという。
山田氏は「現状では製造現場からの情報のフィードバックが弱いということは自覚しているが、まずは設計領域の変更や柔軟性に耐えられるような仕組みを導入し、徐々に製造領域での柔軟性に耐えられる仕組みを作り出していきたい」と述べている。
富士通では2017年5月にデジタルモノづくり基盤「コルミナ」を発表※)。VPSはその1つのアプリケーションとして展開していく方針である。現状ではVPSとコルミナとの接続は実現できていないとするが「現在連携のインタフェースについて開発中だ。VPSやGP4で得られる情報はAI(人工知能)などの相性もよく、今後シナジーを発揮できると考えている」(富士通 産業・流通営業グループ VP 野口勝史氏)という。
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