時代はバーチャル! モノづくりの形を変えるVR:日本機械学会 設計工学・システム部門の講習会より(1/2 ページ)
設計プロセスでのVR(Virtual Reality)技術の活用は着々と進んでいる。リアルなイメージを試作前に作成、活用することによる効果は思いの他大きいという。
製造業では3Dデジタル設計が主流になりつつあり、フロントローディング検討をデジタルで行うことも増えている。その中で、CAD/CAM/CAEの共通3次元データ環境として駆使可能なVE/VR(Virtual Engineering/Virtual Reality)が注目を集め、加速的な展開が進んでいる。
2014年11月19日に日本機械学会 設計工学・システム部門が開催した講習会「VE/VRを用いた設計の新しい検討手法の紹介」では、VE/VRの現状や製造業を含んだVR関連技術の動向が紹介された。そのうち本田技術研究所 四輪R&Dセンター 開発推進室 CISブロック シニアエキスパートの内田孝尚氏と、東京大学大学院情報理工学研究科 知能機械情報学専攻 教授の廣瀬通孝氏の講演から紹介する。
CG化の可能性を示す
内田氏は産業界、特に自動車業界における、VRも含めたVE開発環境を用いた動向を説明した。従来は産業界でのCGの利用はデザイン面が中心だった。だが開発や設計を含めたモノづくり全体で使われつつあるという。
ホンダでは現在データが全部そろっていれば3〜5時間で3万パーツのCGができ、立体視表示システム「CAVE」で見られる。さらに大規模なシステムを持つメーカーでは15分の場合もある。このシステムの“すごいところ”は、あちらこちらから、反射なども含めて対象物が見られることだという。例えば「計器パネルの反射の映り込みを防ぐためにシボを変える」といった検討が実機試作なしで行える。外見の確認での利用はこれまでも多かったが、最近は内部のパーツのシミュレーションにまで採用が広がってきたということだ。
さらにCAEの結果をそのままCG化した例もある。射出成型の際に製品表面に出るウェルドラインなども見つけやすくなる。こういったことは市販のVRシステムで十分可能だという。例えば衝突であれば、目の前で起こっているかのように、直感的に理解できる。気になる部品がどうなっているかすぐに認識できるようになるとともに、実物を前にして初めて気付くような問題にも気が付きやすくなる。
「CG化は単に見えるといったこと以上の大きな効果がある」と内田氏は述べた。こういった取り組みにより、今まで解析担当者の説明が必要だった解析結果の評価を実験解析者自身も行えるようになる。「CGは、非常にレベルの高いコミュニケーションツール、あるいは検討ツールになり始めている」(内田氏)。
3次元図面ルールのステップアップ
内田氏は、3次元図面に関するルール作りの動向についても紹介した。その第1段階として、2次元図面情報を3次元図面に入力するルールを定めることを挙げた。従来は人が読み取っていた情報を全て3次元図面に入れるという考え方をベースにしている。これは「SASIG」ガイドラインとして発行済みであり、ほとんどの3次元CADが同ガイドラインに準拠している。
現在は第2段階として「マシンが情報を活用するためのルール作り」が欧州を中心に進んでいるという。開発やCAEの情報が統合され、CAEと設計を行ったり来たりせず、中ですぐCAE検討が可能になる。要はDMU/CAD/CAM/CAEの仕切りが取れ、VEにVR、VM(Virtual Manufacturing)などが入ってくる。「つまり初期の検討の中に対象物のパフォーマンスも含まれる。3次元図面ができる前に性能を作り込めそうになってきた」(内田氏)という。
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