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事故でよくある“あのパターン”を回避する自動運転の要素技術を確立自動運転技術

三菱電機は、車両間通信を活用することで他車の検知情報を活用し、1つの自動車だけでは見えない死角を補うことで、安全に自動運転を行える技術を開発した。2021年度の事業化を目指し、研究開発をさらに進める。

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 三菱電機では2017年5月24日、研究成果披露会を開催し、車両間協調により死角をカバーする自動運転システム技術を紹介した。

 今回三菱電機が開発し、実証に成功した技術は、複数の自動車のセンシング情報を組み合わせることで、1台の自動車によるセンシング情報では把握し切れない「死角」をカバーし、安全な自動運転を実現するという技術である。具体的な実証試験としては、自動車が右折する際に直進する対向車が来ているという場面で、対向車の背後の死角に二輪車がいるという状況を安全に運転するというものである。

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三菱電機が開発した車両間協調による自動運転システムの概要。死角に入る二輪車(赤丸)を複数車両のセンシング情報を連携させることで把握する(クリックで拡大)出典:三菱電機

 右折時の対向車の後ろに二輪車がついてきており、右折をする際に二輪車を巻き込んでしまう状況は、自動車教習所でも習う「事故の典型パターン」である。これは、二輪車が対向車の完全な死角に入っており、右折を開始して気付いた時には手遅れになってしまうという状況から起こるものだ。

 そこで三菱電機では、日常的に発生しがちなこのシチュエーションを解決するために、車車間通信(V2V)を活用し、死角をカバーするという技術の開発に取り組み、実証を行った。

 右折車両は、前面方向に対しミリ波レーダーとカメラをセンシングデバイスとして搭載。一方対向する直進車両については、後方に対しレーザースキャナーとカメラを搭載し、後方の二輪車を含む周辺の障害物などを検知する。検知情報は車車間通信で直進車両から右折車両に共有する。右折車両では、直進車両のセンシングデータを進行方向に合わせて反転し、特徴点を抽出して照らし合わせることで、自車の3Dマップに二輪車の位置を反映する。その後、経路を引きながら、進行の時間などを計測しながら衝突のリスクを把握し、衝突を回避する形で運転を行うというような処理の流れとなる。通信については今回の実験では802.11pを活用したとしているが「特に限定されたものではなく、他の技術でも実現可能だ」(担当者)としている。

 担当者は「非常に限られた条件ではあるが、よくありがちな事故のパターンを2つの自動車のセンシング情報を組み合わせることで、回避できるということが実証できた」と手応えについて語っている。

シミュレーターなども用意

 今回は右折車と、直進車の死角に隠れる二輪車というシチュエーションだったが、今後はさらによくありそうな状況への対応を進めていく方針である。こうした取り組みの中で同社では、自動運転用のシミュレーターを開発。パラメータを付与することで、疑似的な環境を作り出し、ソフトウェアの動作などを検証可能とする。

 同社ではシミュレーターソフトだけでなく、シミュレーション用のボードを開発しており、実際に自動車に持ち込んで、シミュレーションにより修正したソフトを実機で試したり、実機で得たデータを再度シミュレーション環境に適用することなどが可能だという。担当者は「自動運転技術はまだ開発の途上だが、実機での実証などの負担が大きいことが開発の障害の1つとなっている。シミュレーションなど開発環境を充実させることで、自動運転開発そのものを加速させたい」と述べている。

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開発用に作ったシミュレーターの映像(左)と付与した3Dマッピングデータ(右)(クリックで拡大)

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