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IoTは町工場でも成果が出せる、市販品を次々に活用する旭鉄工の事例製造業IoT(2/2 ページ)

調査会社のガートナージャパンが開催した「ガートナー・ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2017」の基調講演では、自動車部品製造の旭鉄工が登壇。「町工場でも成果の出せるIoT!〜昭和の機械も接続〜」をテーマに、初期投資が低く町工場でも簡単に使えるIoTシステム構築への取り組みについて紹介した。

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システムだけでは不十分、運用との組み合わせ

 完成させた第1世代のシステムでは、スマートフォンから見ることができるデータは設備の「稼働時間」と「停止時間」の2つだった。しかし「見えるだけでは直らない」ということで、運用方法についても検討することとなった。管理監督者と現場の作業者の両方に機械の稼働状況が把握できるように「あんどん」を設置することにした。

 しかし、「あんどん」についても専用表示装置や設置工事が必要になるなど高額になってしまう。そこで、無線の技術と汎用ディスプレイで「iスマートあんどん」という装置を自作。製作費は通常製品の10分の1に抑えることに成功した。この製品は口コミで評判が広がり、現在までに外部の3社に販売した実績があるという。

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旭鉄工が開発したiスマートあんどんのイメージ図。通常製品に比べて価格を約10分の1に抑えることに成功したという(クリックで拡大)

市販品を次々に活用

 「あんどん」を開発したために、設備の停止時間を減少させることには成功した。ただ、停止時間を減少させたにもかかわらず、生産個数を上げることができなかった。そのため、次に取り組んだのが、生産個数の拡大だ。生産個数が増えない原因としてサイクルタイムのばらつきがあることが分かった。そのため、まず正確なサイクルタイムの取得を目指した。

 ただ、正確なサイクルタイムを取得するためのPLCは高額であったため断念。代わりに秋葉原の電気街で適当な光センサーなどを購入し古い機械に取り付けた。これにより、見えるデータは「生産状況と生産個数」「停止時刻と時間」「サイクルタイム」の3種となった。このシステムを第2世代システムとした。これらの取り組みにより、人が測定する必要がなくなったことから「どうやって改善をするかに集中できるようになり、改善スピードも大幅にアップした」(黒川氏)という。

 改善の一例として、本社工場(碧南市)のバルブガイド切削工程がある。同工程は20年以上使用している古い機械を並べて、最大日産55万本のバルブガイドの生産を行っていた。このサイクルタイムを0.5秒短縮し、停止時間を削減することで1時間当たりの出来高が784個から909個と15%高められたという。さらに、これにより予定していた設備投資(2ラインの増設)が不要となり、5400万円の削減効果を得ることができた。スペースも314m2の省スペース化を実現。西尾工場(愛知県西尾市)では、けん引フックのサイクルタイムを26秒から17秒に短縮し、出来高が1時間当たり107個から180個、約70%の生産性向上を実現した。それにより2ラインの増設が必要なくなり、1億4000万円の設備投資費を削減。休日出勤も廃止することができたという。

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改善の効果(クリックで拡大)出典:旭鉄工
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i Smart Technologies 執行役員でCOOの黒川隆二氏

 ただ「ここまでくるとソフトウェアが複雑になり、専門家に委託することとなった」(黒川氏)とし、システム開発のレッドハットと共同で第3世代の開発に取り組むこととなった。そこで完成したシステムには「生産状況と生産個数」「停止時刻と時間」「サイクルタイム」に加えて「段替え対応」「電池残量」「停止要因入力」の合計6項目を表示できるようになった。

 この結果、停止時間の要因である段替え、刃具交換、異常停止などの対策が実施でき、ロボットの動き直線化などによるサイクルタイムの短縮を実現した。さらに、停止要因撲滅が変化点の減少につながり、品質向上にも好影響を与えられたという。フック工程内の不良率は20分の1に減り、納入不良件数も3分の1になった。設備投資削減額も全体で約4億円になったという。

 黒川氏は、効果が出せた理由として「欲しいものをまずは作って試すことができた」「データを欲張らなかった」「運用に力を入れた」の3点を挙げている。今後は同システムを、2017年に第4世代(海外対応)、2018年に第5世代へと進化させていく計画だとしている。

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