IoTの命運は中小製造業の手に、チャンスの前髪をつかめるか:MONOist 2017年展望(1/2 ページ)
2016年は製造業にとってIoTの活用が身近になった1年だった。しかし、その流れに取り残されていることが懸念されているのが、中小製造業である。ただ、製造業がIoTで「つながる世界」の価値を得るためには中小製造業の活用が必須である。2017年はどこまで中小製造業を巻き込めるかという点がIoTの成否を分ける。
製造業のIoT(モノのインターネット)活用はかなり身近な領域まで進んできている。特にスマート工場実現に向けた工場内の「見える化」など、いくつかに領域においては実導入による成果も生まれて始めており、現実に使用するものとして定着が進んできた※)。しかし、こうした中で“取り残し”が懸念されているのが中小製造業である。
※)関連記事:スマートファクトリーがいよいよ現実解へ、期待される「見える化」の先
なぜ第4次産業革命のカギを中小製造業が握るのか
第4次産業革命と呼ばれるIoTを活用したビジネスモデル変革の動きで全てにおいてカギになるのが「つながる」ということである。製造業においては特にマスカスタマイゼーションを実現する自律的な工場が大きな関心を集めているが、これらを実現するためにもサプライチェーンやエンジニアリングチェーンがつながるなど、あらゆるシステムや組織が連携することが必要となっている。現状では、IoT活用の取り組みについては大企業の取り組みの方が活発で、自社内での単独の取り組みの他、企業力を生かして大手企業同士が独自で手を結ぶケースなどが進んでいる。
ただ、モノづくりにおいて全ての部品、全ての工程を自社だけで賄うということはほとんどない。そして、多くの場合、そのサプライチェーンやエンジニアリングチェーンの中には中小製造業が含まれている。つまり、「つながる」効果を本格的に享受するためには中小製造業のIoT対応が必須となるわけだ。特に、日本においては、全企業の中で中小企業が占める割合が99.7%となっており、中小企業のIoT環境をどう整えていくのかというのが大きな課題となっている。
日独の連携項目にも「中小企業向け」
こうした状況に対し、政府も2016年には取り組みを強化する動きを示している。2016年4月には、日本政府とドイツ政府がIoTやインダストリー4.0の取り組みについて6項目における協力項目を定めた。その中には「中小企業に対するIoT利用の支援」が項目として含まれている。6つの協力項目は以下の通りだ。
- 産業向けサイバーセキュリティ
- 国際標準化
- 規制改革
- 中小企業に対するIoT利用の支援
- IoTおよびインダストリー4.0に対する研究開発
- 人材育成
さらに具体的な活動として、経済産業省などは中小製造業のIT化の支援を行う仕組み「スマートものづくり応援隊」を始動。「スマートものづくり応援隊」とは、中小製造業のIT化の支援を行うとともに、製造現場においてIoTをどう活用すべきかという支援を行う組織である。さらに「スマートものづくり応援隊」に相談できる拠点として、さいたま市産業創造財団(さいたま市)、大阪商工会議所(大阪市)、山形大学(山形市)、北九州商工会議所(福岡県北九州市)、ソフトピアジャパン(岐阜県大垣市)などが選定されており、今後も徐々に拡大する方針を示している。
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