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IoTは町工場でも成果が出せる、市販品を次々に活用する旭鉄工の事例製造業IoT(1/2 ページ)

調査会社のガートナージャパンが開催した「ガートナー・ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2017」の基調講演では、自動車部品製造の旭鉄工が登壇。「町工場でも成果の出せるIoT!〜昭和の機械も接続〜」をテーマに、初期投資が低く町工場でも簡単に使えるIoTシステム構築への取り組みについて紹介した。

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 調査会社のガートナージャパンは2017年4月26〜28日、「ガートナー・ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2017」を開催。同イベントの基調講演では、自動車部品製造の旭鉄工 社長の木村哲也氏らが登壇し、「町工場でも成果の出せるIoT!〜昭和の機械も接続〜」をテーマに、初期投資が低く町工場でも簡単に使えるIoTシステム構築への取り組みについて紹介した。

IoTのノウハウを外部へ展開

 旭鉄工は、自動車のエンジン、ブレーキ、トランスミッションなどの部品を製造するメーカーである。年商は158億円(2015年度)で従業員は480人。社長の木村氏はトヨタ自動車に21年間勤務し、主に車両運動性能の先行開発や製品開発に従事した。また、生産調査室でトヨタ生産方式を学び、内製工場および社外工場を指導した経験を持つ。2013年に旭鉄工に転籍。組織や仕事の進め方など含め経営全般の改革に取り組み、特に生産性についてはトヨタ生産調査室での経験を生かし改善を推進した。

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旭鉄工 社長の木村哲也氏

 改善への取り組みの中で大きな成果を生み出したのが「製造ライン遠隔モニタリングシステム」である。これは、安価なセンサーを使い、自社開発で生産ラインのIoT(モノのインターネット)化を実現したものだ。自社工場の機器から情報を吸い上げ、生産数、サイクルタイム、停止時間を把握し、改善スピードを大幅にアップするなどの成果を生み出した。

 木村氏は「このシステムを使い3億円以上の設備投資削減と、1億円以上の労務費低減を実現した」と成果について述べている。さらに同システムの外部展開を進めるために新会社「i Smart Technologies」を設立。同システムを他の中小企業に導入する取り組みを始めたという。

「古い設備からデータが取れない」

 旭鉄工が今回の改革に取り組んだのは2014年からだ。最初はTPS(トヨタ生産方式)を行うための問題点把握の道具として、生産管理板の導入から始めた。ただ従業員が、毎日生産板に数値を忘れずに書き入れるのは負担が大きく「生産実績と停止時間の把握は自動化し、人は改善に集中するなど、付加価値の高い仕事を」という考え方に至ったという。

 その後、自動化を進めるために、システムの導入を検討したが、大規模で高額(数百万円から数千万円)である上、現在保有する古い設備ではネットワーク機能を付加することができなかったり、欲しいデータが取れなかったりする問題があり、折り合いを付けることができなかった。そこで、外部から購入するのは諦め、自社で全てを開発することにした。

 開発には、旭鉄工で生産技術・工程改善活動を行ってきた黒川隆二氏(現 i Smart Technologies 執行役員)ら2人で開始した。「当初は基礎知識が不足していることが大きく、その打開策としてRaspberry Pi(ARMベースのシングルボードコンピュータ)を使ってみようということになった」(黒川氏)※)。また「初期投資を減らすために、クラウドおよび無線、汎用(スマホなど)のものを使う」(木村氏)考えのもと開発を進め、第1世代のシステムを完成させた。

※)関連記事:「Raspberry Pi 3」の実力をベンチマークで検証する

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