第4次産業革命で各団体が立てる「参照モデル」とは何?:いまさら聞けない第4次産業革命(11)(4/4 ページ)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについてお伝えしています。第11回となる今回は、各団体が打ち出す「参照モデル(リファレンスアーキテクチャ)」について説明します。
日本が出したリファレンスアーキテクチャ「IVRA」
日本が作った参照モデルもあるんですか。
あるわよ。IVIの「IVRA」が最近策定されて国際標準化団体のWGに提案されているわ。日本のモノづくりっぽい「現場力」的な要素が特徴といえるかしら。
「現場力」が反映された参照モデルってすごいですね。
日本のモノづくりの強みは現場の「人」に基づく「現場力」とされているけど、海外のモデルだとそこは重視されないから織り込まれていないわ。「PDCA」「4M」「QCDE」の3つの視点で作った現場のブロック(SMU)を作ったのが象徴しているわね。
「IVRA」は、日本のモノづくりの強さである現場力を取り込んだスマートファクトリーを表現したことが特徴だといわれています。全体的なモデルよりも前にまず「現場」を表現した3次元モデルの1つのブロックを「スマートマニュファクチャリングユニット(SMU)」を設置。この3つの軸を「人を巻き込んだPDCA」「4M(人、機械、材料、方法)」「QCDE(品質、コスト、納期、環境)」と位置付け、現場の工程における課題などを表現できるようにしています。
さらにこのSMUを組み合わせて企業全体でどういう組み合わせを実現するのかを表現しています。SMUの複合ユニットを「ゼネラルファンクションブロック(GFB)」として、企業レベルのスマート工場の活動を示します。さらに、SMU間のやりとりを価値、モノ、情報、データの4つと規定し、企業活動などを動的に示すことも実現しました。
「現場」をモデル化しているところが、まさに日本のモノづくりって感じですね。これなら、社長にも理解してもらえる説明ができそうです!
技術規格などの議論の手前にあるもの
現在、このIVRAも含めて、国際標準化団体のWGではそれぞれのモデルでのすり合わせが行われています。多くの製造業があれば、考え方やモノづくりの運営方法も異なります。これらを内包する形で、最適な形を探り、全体像を作った上で、新たな技術の開発だったり、規格の策定だったりを進めていくという流れになると考えられます。
日本の企業はこうした全体像の策定ついては、今までは特に入らなくても問題ないという考え方が多かったように思います。最終的な技術規格に対応さえすれば良いという考え方です。しかし、この連載では何度も繰り返していますが、第4次産業革命にはまだ確立した正解の形はないのです。さらに、その影響範囲はあらゆる産業や企業、組織に及ぶと見られています。そうした中で、「日本らしさ」を示しておかなければ、日本の強みだとされる「現場力」が発揮できない姿で、規格などが策定されるリスクを抱えることになります。こうした中でIVRAによりあらためて参照モデルを提案し、「日本らしさ」を示せる余地を生み出したということは意味があると考えています。
今回は、第4次産業革命の参照モデルについて解説しました。次回は、2017年3月に開催され日本とドイツの協力関係などが注目を集めた「CeBIT」での動きをまとめたいと思います。
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