ヤマハ発動機の戦略拠点、徹底した製販一体化で短納期化を実現:メイドインジャパンの現場力(9)(2/2 ページ)
ヤマハ発動機は、表面実装機や産業用ロボットの開発、製造、販売を行う「新浜松IM事業所」を完成。新拠点を軸に製販一体化を強化しIM事業部の売上高600億円、利益率20%の目標達成を目指す。
課題解決型事業へと進化するIM事業部
ヤマハ発動機の連結売上高は1兆5028億円(2016年12月期)。このうち二輪事業が9301億円で、マリン事業(船外機など)が2972億円、特機事業(四輪バギーなど)が1523億円となっている。
今回新浜松IM事業所をオープンさせたIM事業の売上高は469億円でまだまだ成長余地の大きい事業といえるだろう。IM事業はもともと1974年オートバイの組み立てライン用ロボットの開発に着手したところからスタートした。1981年に事業部を設立し、スカラロボットの販売を開始。1984年には輸出も始めた。1987年にYAMAHAブランドのサーフェスマウンターの販売を開始しIM技術センター(浜松市早出町)を完成させた。2015年には日立ハイテクグループからマウンターの事業資産を譲受し、事業をさらに増強。現在は、開発、製造、販売一体のスピード経営という強みを生かし、自動車、家電、モバイル、EMS(設計・生産受託サービス)領域へと販路を拡大し、高収益型のビジネスモデルの確立に取り組んでいる。
主力商品である表面実装機は、各カテゴリーでそれぞれ世界トップレベルの搭載速度と多種多様な部品・基板に対応可能な汎用性を同時に両立できる独自の「1ヘッドソリューション」コンセプトを採用し、特に汎用機分野ではトップシェアを誇る。また印刷機、ディスペンサー、検査装置などの周辺機器も取りそろえ、実装設備のフルラインアップメーカーとして、ライントータルでの効率化・品質向上を実現した。
一方、産業用ロボットも単軸、直交、スカラ、多関節といった多彩なロボットから、画像処理システム、搬送リニアコンベヤーモジュールに至るまで、自動化工程に求められる産業用ロボットと周辺機器をトータルに幅広くラインアップしている。2016年には統合制御型ロボットシステム「Advanced Robotics Automation Platform」を開発し、複雑化、多様化、高速化する生産現場の課題解決型の提案を強化している。
新事業所を核に2018年には売上高600億円に
2017年2月28日に行われた新浜松IM事業所の落成式典のあいさつに立ったヤマハ発動機 代表取締役社長の柳弘之氏は「経営戦略の中でIM事業部ではファクトリーオートメーション(FA)やロボテックス技術を高度化、先鋭化しソリューションビジネスの力を高めていく方針を定めている。これらの技術を世界中で販売拡大していくために中国、米国、欧州に販売会社を設けたが、それを支える生産体制も開発と製造が一体となったより効率の良いものに整備していかなければならない。こうした技術、販売、生産面での整備を進めてきた結果、事業は現在順調に推移している。ここ数カ月は世界中から多くの受注がある。今後はその数に応えるだけでなく、より付加価値の高い製品サービスを提供していきたい」と今後の事業拡大向けて意欲を示した。
IM事業部の今後の計画としては2017年には売上高を500億円、2018年600億円に引き上げる。特に現在売り上げ構成比2割のロボットが中国を中心に組み立てロボットを受注が大きいことから、さらに比率が高まると期待している。また、営業利益率も2018年には20%の達成を目指しており、同社では新事業所を核に売り上げ拡大、高収益体制の確立を目指す。
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