工場に残された手作業のロット控え、小さな工夫で作業時間を60分の1に:メイドインジャパンの現場力(8)(2/2 ページ)
スマートファクトリーなど工場においてもITを使った自動化が大きな注目を集めているが、現実的には工場内作業には多くの手作業が残されており、それを解決する機器が存在しない場合も多い。工場では日々そうした作業を効率化する小さな改善を積み重ねているわけだが、本稿ではOKIが行った取り組みを紹介する。
部品のロットナンバーを自動入力する仕組み
2005年に開発した機器の老朽化が進んだこともあり、2017年1月には新機種を装置メーカーと共同開発した。最も大きな機能が光学的文字認識(OCR)機能の追加である。従来機器では、実装された部品ロットの画像をExcelで台帳化し、その画像が一覧として貼り付けられるだけであったが、新機種ではOCR機能を搭載したことにより、部品の画像とともに画像から読み取ったロットナンバーを自動で抜き出してリストに加えられるようになった。
町田氏は「従来機器でも画像データから転記する作業が発生していたが、これをほぼ全て解消できるようになった。作業者はOCRによる判別が難しいロットナンバーをチェックするだけですむ」と述べている。結果として1カ月に合計15時間くらい必要だった作業時間を2時間程度に削減することに成功したという。
さらに、画像取得についてもZ軸のピント調整機能を追加。従来は2次元でのピント調整だったために、DCDCコンバータなど高さのある部品では画像がピンぼけする場合があった。最終的にこの確認が手戻りとして発生して作業時間を増やしていた状況だったが、Z軸でのピント調整が可能になったことで高さのある部品でもピントを合わせることが可能となった。これにより、従来では1カ月で20時間くらいかかっていた作業時間を結果的にゼロにできたという。
最終的には合計で月間127時間必要だった作業を2時間で終えることができるようになった。町田氏は「作業員の負担を軽減できた他、トレーサビリティの面でも大幅な改善ができるようになった」と成果について述べている。
今後に向けてはさらにロット控えの結果を顧客企業に共有する仕組みなども検討しているという。町田氏は「ロットナンバーの確認が必要な状況は顧客企業がエンドユーザーに販売した際に不具合になった場合が多い。契約条件などにもよるが、将来的には自動作成したロット控えを共有し、確認作業まで自動化することを検討している」と述べている。
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