日本の製造業はIoT活用で強い現場を生かせるか、危うい「一人インダストリー4.0」:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
「インダストリー4.0は生産現場だけの話ではない。設計から生産に至るまで連携を図っていく必要がある――」。東洋ビジネスエンジニアリングの年次イベント「mcframe Day 2017」のオープニングトークライブでは、製造業のIoT活用において、生産現場に活動が偏りがちな日本の現状を指摘する声が相次いだ。
小型人工衛星の自動製造プロジェクト「OneWeb」は驚異的
次に話題になったのは「日本の製造業のこれから」。平林氏は「日本の特徴は無人化よりも人と機械の協調によって生かせる。見える化で人間にフィードバックすることが大切だ」と語る。羽田氏は「製造業のIoT活用は確かに生産現場に話がいきがちだ。しかし、これまでの設計製造でも重視されてきた『ワイガヤ』を生かせるようにすべきだ。そのためにはPLMを活用して設計+製造情報を管理する必要がある」と話す。
ここで白坂氏は、エアバスの小型人工衛星の自動製造プロジェクト「OneWeb」を例に挙げて警鐘を鳴らした。これまで人工衛星は、開発から出荷までに1年〜1年半かかっていた。生産も手組みが基本である。対してOneWebは1週間で15機生産することを目標としている。「小型人工衛星だが3日で1機作れるのは驚異的。大型に技術適用して10カ月で出荷できるようになれば、もはや日本の宇宙産業では太刀打ちできない」(白坂氏)。そして白坂氏は「OneWebも、インダストリー4.0と同様に、設計から生産までを一気通貫で考えている」と述べる。
西垣氏は「IoTでクリティカルな役割を果たすのはPLMだ。だが日本の製造業にはこのことが伝わらない。生産ラインの自動化や混流化といったことはできているのに、マスカスタマイゼーションを実現する上で開発設計プロセスにかかる時間は理解されてない。シーメンスの何が怖いかと言えば、生産技術ではなく、開発設計から生産までのデジタル化しようという取り組みだ」と語る。
ちょっと学べば最強になる
そして最後の話題は「日本の製造業の可能性」。ここまで厳しい言葉をつづけてきた白坂氏だが「スタンフォード大学が提唱した『デザイン思考』の基になったのは、日本のモノづくりにおける『ワイガヤ』だ。この元からあるものを生かすべき。先ほど話したシステム的な考え方は、日本人が苦手なわけではなくて、やり方を教えていなかっただけ。少し学んで試せば、日本の製造業の強みを生かせるはずだ」と今後に期待を込める。
西垣氏も「日本の製造業にとって生産現場は強みだ。この強みを生かして、さらにかせぐビジネスモデルを考えてほしい。日本の製造業はすぐにQCDに行ってしまうけれども、生産現場だけにIoTを押し付けないで」とエールを送る。
平林氏は「設計と製造をつなげていくことは確かに重要で、それを見られる人材を育成していかなければならない。実際には、世界の工場をつないでから、そこから設計につなげるという順番になるのではないか。現場を強くする形が、日本でなじむIoTのやり方だろう」と語る。
羽田氏は「日本はハードウェアが強く、ソフトウェアが弱いといわれる。これは逆に、弱いソフトウェアをちょっと学べば最強になるということ」と述べる。
モデレーターの八子氏は「議論全体を通じて、生産現場にとどまらず、上流の設計情報をモデリングなどによってバリューチェーン全体に行き渡らせるべき、ということが伝わったと思う」と語り、トークライブを締めくくった。
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